トヨタの「真の弱点」とは何か? 低燃費車で世界制覇も、迫られる脱“機械屋”という現実

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トヨタにはHV、EV、FCVと戦場で戦う術があったため、EV化自体はさほど脅威ではなかった。しかし、SDV化の波は自然発生的かつ不可逆的な流れである。

自動車業界の転換点

2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)
2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)

 自動車業界の歴史を振り返ると、それぞれの時代に革命的な技術が現れ、産業全体を変革してきた。20世紀は深刻な環境問題から、排ガス規制や燃費規制が制定され、それをクリアするための低燃費車やハイブリッド車(HV)が登場した。

 21世紀に入ると環境負荷軽減そのものではなく、“環境にやさしい”というイメージで、電気自動車(EV)に脚光が当たるようになった。各国ではEV補助金や減税といったEV支援策が行われ、米国のテスラを筆頭に、伝統的な自動車メーカーや多くの新興企業がこのEV開発競争に参加し、電動化の波は世界中に広がった。

 しかし新型コロナウイルス感染症の流行が収束した2023年頃、世界的なEV化の波に一部陰りが見え始めた。これは、

「Well to Wheel(走行中だけではなく、油田からタイヤが駆動するまでどれだけのCO2が排出されるか)」

で見た場合、

・HVよりもCO2排出量が多い
・EVのバッテリー製造に必要なレアメタルの大量採掘が環境負荷や汚染を引き起こす
・EVが使用する電力が主に火力発電に依存している

ことなど、EV固有の問題だけでなく、

・充電ステーションの不足
・充電時間の長さ(充電渋滞を含む)
・補助金や減税なしではガソリン車やHVに比べて高価であること
中古車価格が低い傾向にあること

など、利便性や経済性の問題も浮上している。さらに、過度なEV開発競争や販売競争が原因で、EVが収益性を欠くようになったメーカー側の事情も一因となっている。

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