大都市の公共交通「1日無料デー」が新たな経済効果を生む! 北九州市ではなんと3.5億円、課題も含めて考える

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北九州市は3月末、「地域公共交通市内1日無料デー」の実施結果を発表した。市内五つの公共交通機関の運賃が、市民以外も含めて無料になった同イベント。利用者数は前年比2倍の58万3000人となった。

求められる住民理解

「地域公共交通おでかけ支援事業 地域公共交通市内1日無料デープレミアム付きタクシー券 実施結果」(画像:北九州市)
「地域公共交通おでかけ支援事業 地域公共交通市内1日無料デープレミアム付きタクシー券 実施結果」(画像:北九州市)

 しかし、これは簡単なことではない。

 運賃収入の減少を税金で補填しなければならない以上、地元住民が

「財政負担をよしとする」

ための説得が必要だ。現状の日本では「誰もが移動の自由を享受できるべきだ」という交通権の概念が社会に十分浸透しているとはいいがたい。そうしたなかで、地域の実情を考慮せずに無理に無料化を提唱しても、住民の理解は得られまい。

 では、全国で相次ぐ運賃無料の日の意義とはなんだろうか。

 各地で実施が続く背景には、少子高齢化や人口減少で、路線バスや地方鉄道の存続が危ぶまれるという共通の課題がある。モータリゼーションの進展で利用者が減り続ける一方、運転手不足も深刻化している。とりわけバスは減便や廃止の動きが相次ぎ

「公共交通空白地」

が拡大しつつある。こうしたなか、無料の日は住民に公共交通の重要性を再認識してもらう格好の機会となる。そこには、地域の足を守るとだけでなく、

「地域をみんなで支え合う意識」

を共有する目的がある。それこそが、無料の日の最大の狙いといえるだろう。

 とりわけ、コンパクトシティ化を目指す自治体にとって、鉄道や基幹バスの維持は不可欠だ。それを支える住民の合意形成を促すのも、無料の日の役割といえる。全国で相次ぐ無料の日の実施は、交通政策のみならず、30年後、50年後の日本の姿を考える契機となるだろう。

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