理想ばかり語るな! 路線バス維持のために「ドライバーの給料を上げろ」は“机上の空論”である【連載】ホンネだらけの公共交通論(4)
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路線バスの「2024年問題」が顕在化するにつれ、バスドライバーの給料を上げるべきだとよくいわれる。しかし、少なくとも現時点では、これは「机上の空論」にすぎない。いったいなぜか。
事業者の窮状

路線バスの「2024年問題」が顕在化し、筆者(西山敏樹、都市工学者)もその専門家としてマスメディアでコメントする機会が増えてきた。その過程で大切にしているのは、不用意に「バスドライバーの給料を上げるべきだ」といわないことだ。なぜなら、少なくとも現時点では“机上の空論”だからである。
もちろん一市民として、彼らの給料が上がればいいと思う。しかし、国土交通省の「2022年版交通政策白書」を見ると、そうとも簡単にいえないことがわかる。実際、2020年度には乗り合いバス会社の
「99.6%」
が赤字を計上している。同時に、廃止されるバス路線は1543kmで、2010(平成22)年度から2020年度までの累計は
「1万3845km」
となる。そんななか、2024年問題が顕在化し、バスの運行本数確保が難しくなった上、新型コロナによる在宅勤務の普及で、安定収入源だった定期券収入も難しくなった。
そのような状況下で、経済的制約を無視して「運行本数を確保するためには、バスドライバーの給料を上げるべきだ」と安易にいう識者もいる。さらに3月以降、このような議論が社会的にも活発になっている。しかし、路線バス運行の厳しさを考えれば、
「アイデア次第」
で現状を打開できることを忘れてはならないのだ。