大都市の公共交通「1日無料デー」が新たな経済効果を生む! 北九州市ではなんと3.5億円、課題も含めて考える
北九州市は3月末、「地域公共交通市内1日無料デー」の実施結果を発表した。市内五つの公共交通機関の運賃が、市民以外も含めて無料になった同イベント。利用者数は前年比2倍の58万3000人となった。
成功の鍵は都市計画との連携
ただ、こうした無料化社会実験を恒常的に実施することは難しい面もある。
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多くの地域では、原資としてコロナでの交通崩壊を防ぐための臨時交付金など自治体からの負担によって実施してきた。つまり、
「国や地方自治体からの支援」
がなければ、交通事業者にとっては、運賃収入を失うだけになってしまうのだ。この点について、前述の今釜氏らの論文は次のように提言している。
「行政の支援を得ながら、中長期的に増収増益につなげる工夫が求められる。移動データの分析・活用を通じ、まちづくりや地域振興とも連動させることが重要だ」
つまり、運賃無料の日は、
「それ単体で成立するイベント」
ではない。都市計画やまちづくりの将来ビジョンと緊密に連携させ、公共交通の利便性向上や沿線開発など、地域の活性化戦略の一環として息の長い取り組みを継続していくことが肝要というわけだ。
さて、無料の日に利用者が増えていることは、運賃が無料あるいは安ければ、多くの人が自家用車ではなく公共交通を利用する可能性があることを示唆している。世界では、この点を重視して公共交通の運賃を税金で賄う、無料化施策を実施しているところもある。
例えば、フランスでは1970年代以降約30の自治体がバスを無料化。2020年にはルクセンブルクで全国の鉄道、路面電車、バスが無料化されている。