「これは返金レベル」 1回数万円の“鉄道撮影会”で起きた失態に、ファンの不満爆発? 落胆と満足の境界はどこにあるのか
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ファンと鉄道会社の接点

こうした有料撮影会は、コロナ禍による鉄道利用者の激減を受け、新たな収入源確保の方策の一環として、各鉄道会社に急速に広まった。
鉄道撮影を趣味とする「撮り鉄」は、近年とみにマナー悪化が指摘され、線路侵入や樹木の無断伐採など違法行為も摘発されている。鉄道という公共交通を対象とする以上、鉄道会社や沿線住民に迷惑をかけない、とった最低限のわきまえは大前提だ。
他方、有料撮影会においては「消費者」「顧客」でもある。現に動いている鉄道現場での撮影ゆえ制約はあり、沿線で撮影するのと同じくマナーは不可欠だが、よりよい「商品」提供のためにはある程度の要望も許されよう。鉄道側も、顧客たる撮影者のリクエストに耳を傾け、ニーズを分析する姿勢が求められる。
例えば、くだんの高崎の撮影会では、参加者に対し
「イベントで知り得た機密内容を情報発信しない」
「JR東日本に損害が発生した場合、その損害を賠償する」
といった趣旨の誓約書の提出を求められたという。法律や注意事項の順守は当然のことで、あえて「お客さま」に誓約させるとは、いささか高圧的にも思われる。
「目玉商品」であるEF65 501号機にしても、Aさんによれば
「塗装が剥がれ落ちた箇所があり、痛々しかった」
と明かす。これも品川の撮影会とは対照的だ。
貴重な車両は財産だが、ただ展示すれば「お金になる」という考えでは、こうしたイベントは長続きしない。コロナ禍を契機に思いがけず生まれたファンと鉄道現場の接点である。ニーズを理解し、共感する現場社員のノウハウが各地で共有され、その関係性がより成熟していくことに期待したい。
最後に書き添えるが、かつては鉄道工場や車両基地は
「無料」
で公開され、車両展示や撮影会も行われていた。有料イベントは従来にないこだわりが実現できる機会とはいえ、万単位の支出は誰もができるわけではないし、特に小中高生にはハードルが高い。次代の鉄道への理解者を増やすためにも、無料かごく安価なイベントも並行して開催されることを望みたい。