中国が台湾を軍事侵攻? よくある台湾有事論が「単なる妄想」である3つの理由
台湾有事論は、日本の防衛力増強の根拠でもある。防衛費の増額と敵地攻撃能力は必要である。その理由として、「台湾有事は日本有事」という脅し文句とともに取り上げられている。だが本当なのか。
従う台湾

第2に、台湾も現状維持に従っている。
台湾にとって現状は利益しかない。
まず、告台湾同胞書により台湾の安全は保証された。台独つまり台湾が独立を宣言しない限り中国は武力回収を図らない。もし、中国が武力行使を図れば米国が介入する。そのような構図となっている。
また、経済交流も提供された。中国は大陸の市場を開放した。
「同じ中国人である」
とのロジックで台湾住民にも本土の人民と同じ待遇を与えた。台湾の繁栄はその結果である。
ほかにも米国の軍事援助も再開された。中国が黙許を与えたためである。1972年の米中の関係正常化からは援助は低調となり、台湾は窮してソ連に兵器売却を求めるまでに至った(*)。その制約も事実上解除されたのである。
唯一の問題は、国家として扱われないことである。
ただし、台湾の正統政府としての体面ははるか以前に喪失している。1949年以降は中華民国の実態を失い、1960年代には中国の陰に埋没し、1971年には国連から追放され、1973年には日本との国交も消滅した。
それからすればさほどの意味もない。国家ではなく地域の扱いも問題はない。
それよりも台湾は安全や繁栄を優先する。米中合意による現状維持に乗るのである。
これも台湾有事を非現実的とする。台湾自身も現状維持を望んでいる。そのため中国を刺激しないように振る舞う。台湾への武力回収を肯定する政策は取らないのである。
*:当時、蒋介石はソ連にMig-23戦闘機の売却を求めていた。もともと国民党はレーニン主義であり、蒋もソ連に親近感を抱いていた。また、当時は中ソ対立の全盛期であり「敵の敵は味方」の論理で購入可能と見ていた。