「死の商人」とは何か? 兵器は自衛か商売か、ガザ侵攻で注目される言葉の歴史を振り返る

キーワード :
,
伊藤忠商事は2月5日、子会社を通じてエルビット・システムズと締結していた協力覚書を2月末までに解消すると発表した。関連して話題になったのが「死の商人」という言葉だ。

市場維持の代償

伊藤忠商事のウェブサイト(画像:伊藤忠商事)
伊藤忠商事のウェブサイト(画像:伊藤忠商事)

 自社製品が意図せず使用されてしまった企業にとっては、当事国に市場を持つ企業の方が「死の商人」色が強いかもしれない。2023年11月、トルコ議会は

「イスラエルの戦争犯罪、ガザにおける罪のない市民の殺害に公然と支持を表明した企業の製品」

のボイコットを求めた。冒頭で紹介した伊藤忠商事のように、イスラエルのガザでの蛮行をきっかけに市場から撤退した企業もあるが、市場での地位を維持するために、いまだにイスラエルを支持している有名企業も多い。

 支援を公然と表明する企業は、わかりやすい「死の商人」とみなされる。イスラエルのガザ侵攻に関しては、2023年10月、フランスのスーパーマーケットチェーン、カルフールのイスラエル支店がSNS上でイスラエル軍への支持を表明し、各国で不買運動が起こった。これを受けて、同社はSNS上での支援表明を撤回した。

 当事国の市場を維持するために、企業が政府や軍への支持を表明することが倫理的かどうかは議論の余地があるかもしれない。しかし、明らかなのは、当事国と何らかの形で関われば、その企業は「死の商人」とみなされ、市民による不買運動の対象になったり、投資を引き上げられたりする可能性があるということだ。

 このように、軍事問題に直接関与していない企業であっても、「死の商人」となったり、レッテルを貼られて批判されたりする可能性は高い。このような時代だけに、企業は明確な企業倫理のもとに活動することが求められる。時には、不当な戦争に巻き込まれないために、損切りをすることも必要かもしれない。それは平和のためではない。会社を守るためである。

 それにしても、伊藤忠商事はよく決断したと思う。賛辞を送りたい。他の企業もぜひまねしてほしい。

全てのコメントを見る