「死の商人」とは何か? 兵器は自衛か商売か、ガザ侵攻で注目される言葉の歴史を振り返る

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伊藤忠商事は2月5日、子会社を通じてエルビット・システムズと締結していた協力覚書を2月末までに解消すると発表した。関連して話題になったのが「死の商人」という言葉だ。

伊藤忠の道徳的選択

兵器のイメージ(画像:写真AC)
兵器のイメージ(画像:写真AC)

 大手総合商社の伊藤忠商事は2月5日、子会社の伊藤忠アビエーションを通じてイスラエルの軍需産業大手エルビット・システムズと締結していた協力覚書を2月末までに解消すると発表した。

 同じく覚書を交わしていた日本エヤークラフトサプライの本社前ではデモが行われ、オンライン署名サイト「チェンジ・ドット・オーグ」には「伊藤忠はイスラエルの“死の商人”エルビット・システムズと手を切れ!」という署名ページが作られ、3万3843人が署名していた。

 エルビット・システムズはイスラエル軍が使用するドローンと陸上装備の85%を生産している。ヨーロッパからアジアまで、同社の装備やシステムを導入している国家は多い。

 ミリオタ(ミリタリーオタクの略。軍隊の装備品、軍服、国防に強い関心を持つ人たち)がどんなに擁護の詭弁(きべん)を弄(ろう)しても、兵器の本質は殺人である。こうした道具を製造・販売する企業は、長い間「死の商人」と呼ばれ、批判されてきた。しかし、21世紀になって状況は変わりつつある。あらゆる産業が知らず知らずのうちに戦争に巻き込まれ、「死の商人」となっているからだ。

「死の商人」とは、戦争を商売の種にして膨大な利益を得る人間たちの総称である。彼らは19世紀以降の産業革命による工業化とともに発展した。この分野の古典的名著である岡倉古志郎の『死の商人』(岩波書店、1951年)には、

「文字どおり『商人』であり、槍や鎧を封建領主に売りこむ商人であり、高々、こういう武器をつくる手工業者にすぎなかった。(中略)資本主義が、その発展の歴史的、必然的な結果として、生産の集積、資本の集中をもたらすにいたるや、『死の商人』は独占資本そのものになっていった」

と書かれている。

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