中国人観光客が「青森市に殺到」報道は本当か? 県が意外な実態を説明、新たに浮上したインバウンド課題とは

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フジテレビのニュース番組が先日、青森市の観光地で中国人観光客が増えていると報じた。しかし、実際に青森県へ電話してみたところ……

チャーター便就航で利益拡大

青森県の観光地(画像:写真AC)
青森県の観光地(画像:写真AC)

 こうした流れのなか、青森県は2016年頃から中国人観光客に注目され始めた。

 同年1月から3月にかけて、中国東北部にある大港湾都市・天津と青森を結ぶ定期チャーター便が就航し、ツアー団体が初めて青森県を訪れた。これが莫大(ばくだい)な利益を生み、チャーター便が就航していた期間中、免税品を扱う店の売り上げが50%増加するなど、大きな注目を集めた。地元紙は当時の驚きをこう伝えている。

「本県でも青森港などに外国客船が寄港したり、青森空港に海外チャーター便が到着し、大勢の外国人客が訪れるようになった。中国人客に代表される“爆買い”への期待も高まる。だが、青森港近くの県観光物産館アスパムや、青森空港ビルの免税店担当者は「これまで爆買いに遭遇した経験がない」と声をそろえる。本県では外国人客による経済効果はまだ限定的だ」(『東奥日報』2016年7月3日付朝刊)

 実際、青森県を訪れる中国人観光客はこの時期から急増している。青森県がまとめた「青森県観光入込客統計」では、中国人観光客を人泊数(延べ宿泊数)で集計している。それをまとめたのが次である。

2014年:5080
2015年:1万1280
2016年:1万7040
2017年:6万4430
2018年:7万2210
2019年:6万4710
2020年:1万4490
2021年:950
2022年:2580
(単位:人泊)

 こうして、中国人観光客数は2016年の1万7040人泊から2017年には6万4430人泊に急増し(278%増)、翌2018年には過去最高の7万2210人泊(324%増)となった。青森県はチャーター便の就航をきっかけに中国人観光客をターゲットにした宣伝活動を強化し、これが認知度向上に一役買ったことは間違いない。

 新型コロナウイルスの感染拡大で観光客の増加は一時停滞したが、青森県の人気は衰えておらず、渡航制限の解除で中国人観光客も戻ってきているようだ。

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