「なにわ筋線」工事着々も、大阪一極集中という強烈な副作用 周辺自治体は「若者の転出多い」と悲痛な声
利便性が大きく向上する大阪
大阪市を南北に貫く新動脈・なにわ筋線の工事が着々と進んでいる。完成を見越して沿線で再開発構想が相次ぎ、関西で人口の大阪一極集中が加速する可能性が出てきた。大阪市福島区から堂島川を渡り、北区中之島へ向かう。なにわ筋の中央車線が通行止めとなり、重機が並べられている。大阪府市とJR西日本などが出資して設立された関西高速鉄道(大阪市)が進める鉄道新線・なにわ筋線の工事現場で、地下駅となる中之島駅(仮称)の整備が進む。
近くで働くサラリーマン(55歳)に話を聞くと、
「中之島は大阪の中心部なのに、西側は梅田や難波へ出るのに鉄道を使いにくい。なにわ筋線ができれば、梅田や難波へ気軽に飲みに行ける」
と笑った。
工事は地下駅の南海新難波駅(仮称)が設けられる中央区難波中でも進んでいる。予定地となる千日前通りに面したビルは閉鎖され、取り壊しの準備が続く。難波の繁華街の一角だけに、工事の掲示板に足を止めて見入る酔客もいた。
なにわ筋線は関西高速鉄道が施設を保有し、JR西日本と南海電鉄が乗り入れる。JR大阪駅(北区梅田)のうめきた地下ホームからJR西日本と南海電鉄の共用区間がおおむねなにわ筋に沿って地下を南下し、西本町駅(仮称、西区阿波座)でJR西日本と南海電鉄の路線に分岐、
・JR難波駅(浪速区湊町)
・南海新今宮駅(浪速区恵美須西)
に接続する。
全線複線の延長約7.2km。途中駅として共用区間に中之島駅、西本町駅、南海電鉄区間に南海新難波駅が設けられる。開業は2031年春の予定。関西高速鉄道は
「工事期間が長い地下駅から整備を始めた。今後、トンネル工事に入る」
と説明した。
梅田と難波という大阪の二大繁華街をつなぐだけでなく、JR大阪駅やJR難波駅、南海新今宮駅で既存の路線に接続することで
・新大阪駅(淀川区西中島)
・関西国際空港(大阪府泉佐野市など)
へのアクセスが改善され、大阪メトロ御堂筋線の混雑も緩和できる。利便性が大きいだけに、関西で進む人口の大阪一極集中を加速させる可能性がある。