寝台列車の魅力とは何か? 欧州では“環境配慮”で存在感復活、日本では今後どうなる
欧州の寝台列車
格安航空会社(LCC)は日本以上に欧州を飛び交っている。飛行機での移動がメジャーになり、寝台列車は下火になっていた。しかしここにきて、寝台列車のデビュー、復活のニュースが続いている。
・ベルリン(ドイツ)~パリ(フランス)間
・ベルリン~ブリュッセル(ベルギー)間
・パリ~オーリヤック(フランス)間
の運行が2023年12月に始まった。2024年はバルセロナ(スペイン)~チューリッヒ(スイス)が最高速度230km/h(142マイル)でつながる。ヴェネツィア(イタリア)~リュブリャナ(スロベニア)間も同年スタート予定だ。イタリア・スロベニア国境間の列車は2008年に廃止されて以来となる。
2025年にはバルセロナ~アムステルダム(オランダ)間が予定されている。この年は、パリ~ミラノ(イタリア)~ヴェネツィア路線の復活も企画されている。
さて、2023年12月に9年ぶりに運行再開を果たしたベルリン~パリ間について見てみたい。所要時間14時間でつながる路線で、日中の直通列車はない。現在は週3便、2024年10月からは毎日運航を予定している。
・座席のみ:35ユーロ(約5495円)~
・クシェット席(簡易寝台で相部屋あり):55ユーロ(約8635円)~
・個室:165ユーロ(約2万5905円)~
と設定されている。意外と安いように感じられる人もいるかと思うが、これは補助金のおかげである。
この路線は、ドイツとフランスの国営電鉄会社が運営し、オーストリアが車両提供している。欧州連合(EU)諸国では、気候変動に対する意識が強く、乗客は
「CO2排出量の多い空の旅」
に代わるクリーンな手段を求めはじめており、政府も資金を投入している。
フランスでは、マクロン大統領が2030年までに新たな寝台列車のサービスを10便開設するという目標を2020年に掲げていた。フランス政府は、ベルリン路線には年間1000万ユーロ(約15億7000万円)以上、その他の寝台列車のネットワークも含め数億ユーロを投資した。欧州の激安ともいえるフライト料金は、航空業界が政府補助金や税制優遇を受けているおかげだと指摘されている。
一方、鉄道はインフラ利用に際してなど「各種の税や利用料」を負担している(2023年8月27日付け『AFP BB News』)。そういったベースの是正も国レベルでないと行えない。寝台列車の利用は
「国レベルのサポート」
がないと広がらないのである。