米国の約6割が「EVに否定的」 自動車大国ドイツでも戦略転換、“深い溝”に陥ったEV市場の行方とは?

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欧州の自動車大国ドイツでもEV戦略に変化が出始めている。今後どうなるのか。

EVの誤算

エンジン車のLCA排出量は、製造時はEVより少ないが、走行中にCO2を排出するため、一定距離を走行するとEVより多くなるというのが定性的な共通認識だが(灰色の点線)、この研究ではばらつきの幅を大きく見積もっており、LCAでもEVの排出量の方が多い可能性も示唆している(画像:マンハッタン政策研究所)
エンジン車のLCA排出量は、製造時はEVより少ないが、走行中にCO2を排出するため、一定距離を走行するとEVより多くなるというのが定性的な共通認識だが(灰色の点線)、この研究ではばらつきの幅を大きく見積もっており、LCAでもEVの排出量の方が多い可能性も示唆している(画像:マンハッタン政策研究所)

 米マンハッタン政策研究所が7月に発表した「EV for Everyone-the Impossible Dream(全ての人にEVを―不可能な夢)」には、多くの有益な情報が含まれているが、ここでは結論のみを紹介する。

●EVがCO2排出量の大幅削減につながる保証はない
 バッテリー製造に使用される鉱物の採掘・加工はエネルギー集約的であり、CO2排出量に大きな変動と不確実性があり、LCA排出量はエンジン車を上回る可能性さえある(図参照)。

●EVが経済的にエンジン車と同等になる時期は不透明である
EVの価格は、重要な原材料のコスト、すなわち海外の鉱業や鉱物産業の今後の動向や政治戦略に左右される。

 国際エネルギー機関など多くの機関がLCA排出量の比較結果を発表しているが、未知数を考慮していないのか、EVに有利な数値を使用しており、LCA排出量はエンジン車の方が多いと結論づけている(図の灰色の点線)。

 オスロ市議会交通・環境問題委員会の委員長は、

「最も環境に優しい移動手段は、公共交通機関か自転車に乗ることだ。気候変動や都市部の環境問題を解決するには、車を買い替えるよう奨励するだけではだめだ」

と語っている。

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