米国の約6割が「EVに否定的」 自動車大国ドイツでも戦略転換、“深い溝”に陥ったEV市場の行方とは?
欧州の自動車大国ドイツでもEV戦略に変化が出始めている。今後どうなるのか。
BYDがPHV販売拡大
このように、欧米市場から排除され始め、国内市場の成長が鈍化している中国において、EV販売台数世界ナンバーワンの比亜迪(BYD)が、
「プラグインハイブリッド車(PHV)」
の販売拡大にかじを切った。
さらに、吉利汽車(ジーリー)は7月、ルノーとHV用エンジンを製造する合弁会社を立ち上げ、将来的には他社への供給も視野に入れている。
実際、中国ではEV、PHV、燃料電池車(FCV)に加え、国家プロジェクトとしてHVの販売促進と燃費向上を掲げており、BYDとジーリーは水素エンジンを含めた大幅な燃費向上を目指している。
市場の現状
「新製品の量産化には価値観の違いという深い溝を超える必要がある」
というマーケット理論(キャズム理論)は有名だが、欧米中のEV市場はこの「キャズムの溝」に近づいているようだ。
現在のEVは、新しもの好きで富裕層の多いアーリーアダプター(新製品の初期受容者)向けの高価なスポーツタイプ多目的車(SUV)やスポーツカーが中心だが、需要は満たされつつある。
複数の車を所有する裕福なアーリーアダプターとは異なり、経済的に余裕がなく、自宅に充電器もない大衆消費者は「全ての要求を満たす1台」を求めている。
米自動車業界調査会社エドモンズは、
「EVへの乗り換えが急増する一方で『まだ完全移行の準備ができていない、徐々に切り替えたい』人もいる」
と分析する。
ロイターは、大衆消費者がEVを敬遠する理由として、
「購入コストが高く、航続距離が限られ、充電時間が長く、充電ネットワークが少ない」
ことを挙げている。