日本初「小型観光船の無人運航」実現へ 離着桟も避航も自動 離島航路の救世主となるか
横須賀の猿島航路で、世界初の小型観光船による無人運航の実証実験が成功裏に終わった。離着桟から巡航まで全て自動。繊細なかじ取りが求められる小型船の運航を実現する高い技術は、船舶をめぐる社会課題の解決につながる可能性を秘めている。
無人運航船の意義とは

日本財団の海野光行常務理事は「船の無人化、自動化は社会課題の解決策の一つになる」と話す。
現在、日本国内には旅客船が約2000隻あり、離島との交通手段などとして利用されている。特に小型船は狭く複雑な海域を運航するケースも多く、繊細なかじ取りが必要となり高い技術が求められてきた。
一方で国内旅客船の船員は2000年からの20年間で、約1万人から約7000人と3割減少。船員不足と船員1人当たりの労務負担増加が課題となっている。
海野常務理事は「私たちの目的は無人運航船の普及を通じ、日本に物流革命を起こすとともに、海運国日本の実力を世界に示すこと。無人運航船技術が小型船に実装できるようになれば、離島航路への転用が可能になり、船員不足や労務負担の解消につながっていくのではないかと考えている」と期待感を示した。
小型観光船による無人運航プロジェクトは防災への活用も視野に入れており、陸から近づきにくい場所や、陸の交通が閉鎖されてしまった場合の消火活動や避難支援などへの貢献が想定されている。
丸紅の武智執行役員は「今回の貴重な経験を踏まえ、新たなビジネスモデルを作り上げていくことが我々の役割でありミッションだと考えている。より豊かな社会のインフラへとつなげていくべく、尽力していきたい」と語った。
日本財団は2025年までに無人運航船を本格的に実用化し、2040年までに内航船の50%を無人運航船とする目標を掲げている。同財団は無人運航船の実証実験の実績から日本主導の国際的なルール作りや、無人運航時代に対応した船員養成とインフラ整備などにも発展させていきたいとしている。
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