船の世界もハイブリッド時代へ 蓄電池と発電機のバイオマス輸送船 2023年竣工
499総トン型の次世代EVハイブリッド船
大容量蓄電池とディーゼル発電機を組み合わせて、推進用の大型モーターを駆動させるハイブリッドEVシステムを搭載した船が実現しようとしている。
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商船三井や旭タンカーなどが出資するe5ラボは2021年12月14日、相生バイオエナジー向けバイオマス燃料輸送に499総トン型次世代EVハイブリッド船1隻を導入することで、関西電力や上組と合意した。
旭タンカーが船主となり、上組海運が運航する。設計は三菱重工業グループの三菱造船、建造はエクセノヤマミズグループの本田重工業がそれぞれ手掛ける。
竣工は2023年4月、就航は同年5月を予定。運航時の安全性向上を図るため、離着桟サポートシステムやネットワーク型ポータブルナビなどの先端技術も取り入れる。
ゼロエミッション化に向けた機能満載
今回、新造が決まったEVハイブリッド船は、神戸港から相生バイオマス発電所まで木質バイオマス燃料を運ぶ。デザインはe5ラボと三菱造船が普及を目指す標準ハイブリッド電気推進船「ROBOSHIP」を適用した。
同船は化石燃料を必要とする従来のディーゼル主機関に代わり、大容量蓄電池(容量440kwh)と発電機(容量500kw×2基)のハイブリッドでPM(永久磁石)モーター2基を駆動させる電気推進システムを搭載している。
バッテリーからの給電で航行できるため、出入港や離着桟、荷役といった作業時には蓄電池に貯めた電気を使用することにより、港内作業の完全ゼロエミッション化を実現する。これにより運航時のCO2(二酸化炭素)排出量や燃料費を、既存船に比べて最大50%削減することを見込んでいる。
将来的には発電機の燃料をLNG(液化天然ガス)や水素、アンモニア、合成燃料などに切り替え、航行を含む全てのオペレーションのCO2フリー化を図っていく。
船型は中口径プロペラ2基を備える2軸のツインスケグ幅広船型で、ホールド容積を増やしつつ、浅喫水に対応することで喫水制限がある港にも入港できるようにした。船首側にはバウスラスターも搭載されており、2基のプロペラと操船性は大幅に向上している。
DC(直流)マイクログリッドやPMモーターの採用により、ディーゼル船に比べ機関部区画はコンパクトになるため、空いた場所を乗組員の居住区や追加貨物スペースなどに転用できる。