レアメタル争奪戦! アフリカ南部の「鉄道建設」が、どう見ても米中間の“大きな火種”になっているワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(10)
争奪戦激化

米国と欧州連合(EU)は9月9日、アンゴラ、コンゴ民主共和国、ザンビアのアフリカ3か国を結ぶ鉄道などを整備する「ロビト回廊」計画を発表した。
さらに、米国とEUは、10月25日にはベルギー・ブリュッセルで開催された「グローバル・ゲートウェイ・フォーラム」で、アンゴラ、コンゴ、ザンビア、アフリカ開発銀行(AfDB)、アフリカ金融公社(AFC)との間でロビト回廊の開発協力の覚書に署名した。
これに先立ち、すでに7月にはアンゴラ、コンゴ、ザンビアの首脳が集まり、ロビト回廊の鉄道サービスと物流支援を、30年間のコンセッション方式で「ロビト・アトランティック鉄道」に移管することを決定していた。ロビト・アトランティック鉄道は、
・ヴェクチュリス(ベルギー)
・トラフィグラ(スイス)
・モタ・エンジル(ポルトガル)
で構成されている。
ロビト回廊は、米国が主導する「世界インフラ投資パートナーシップ(PGII)」の一環だ。PGIIは、中国の一帯一路構想(中国の習近平国家主席が提唱し、中国が主導するアジア、ヨーロッパ、アフリカ大陸にまたがる経済圏構想)に対抗するため、2022年6月の先進7か国(G7)エルマウ・サミットで発足した。G7全体で民間資金を含め6000億米ドルを発展途上国のインフラ投資支援に投ずる計画だ。
ロビト回廊が米中間の大きな火種となりかねない理由は、レアメタルの争奪戦と直結しているからだ。ザンビア北部からコンゴには「カッパーベルト」と呼ばれる銅鉱床地帯が広がっている。
しかも、この地域にはコバルトなどの重要鉱物も豊富だ。英国を拠点とする業界団体コバルト・インスティテュートによると、世界全体のコバルト生産量(2022年)は19万8000tで、そのうちコンゴの生産量が14万5000tで全体の
「73%」
を占めている。中国メディアの観察者網は10月27日、
「欧米が中国との鉱産資源確保競争に乗り出した」
と報じている。8月に西村康稔(やすとし)経済産業相がアンゴラ、コンゴ、ザンビアを含むアフリカ6か国を訪問した大きな狙いも、重要鉱物の確保にある。