レアメタル争奪戦! アフリカ南部の「鉄道建設」が、どう見ても米中間の“大きな火種”になっているワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(10)
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アフリカ諸国の対中協調

ヒチレマ政権は、中国との関係を維持する一方で、欧米諸国との協調路線をとるようになった。ザンビアは2023年3月には米国が主導するオンライン会合「民主主義サミット」にアフリカで唯一の共催国として参加している。
しかし、ヒチレマ政権は中国との強固な関係も維持し続けている。ヒチレマ大統領は9月中旬に訪中し、習近平国家主席と会談している。ヒチレマ大統領は、中央広播電視総台のインタビューで、
「『一帯一路』は偉大なイニシアチブだ。このイニシアチブはどの国にも脅威をもたらさない」
との考えを示し、タンザン鉄道のアップグレードを検討しているとも語っている。
アンゴラとコンゴもまた、外交関係の多角化を志向する点ではザンビアと共通する。アンゴラでは、2017年に、38年間続いたドス・サントス大統領を継いで大統領に就任したロウレンソ氏が、中国との関係を維持する一方で、欧米先進国との関係強化を志向している。
ロウレンソ大統領は、2022年12月に米国を訪問、ブリンケン国務長官やオースティン国防長官と会談している。2023年3月には日本を訪れ、日本企業の積極的な投資を促す考えを示している。しかし、その一方でロウレンソ大統領は、中国について
「これまでと同様に友好関係を続けていきたい」
と語っている。一方、コンゴでも2019年1月に大統領に就いたフェリックス・チセケディ氏が、欧米諸国との関係強化に向かった。2022年12月、コンゴはザンビアとともに、米国と電気自動車(EV)用バッテリーバリューチェーン強化に関する覚書に署名している。
ただし、コンゴと中国の関係も揺らいではいない。5月には、チセケディ大統領が訪中し、習近平国家主席と会談し、2国間の関係が全面的戦略協力パートナーシップに格上げされている。
いまのところ、ザンビア、アンゴラ、コンゴは、いずれも欧米と中国の間でバランスを維持している。しかし、そのバランスが一度崩れれば、米中間の激しい対立に発展しかねない。