EV電池の主原料・リチウムを巡る「南米争奪戦」、どう見ても中国が絶対有利なワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(8)

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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。

激しさを増す争奪戦

上海モーターショーにおいて、上海汽車は、130台以上の新車(その約半数は新エネルギー車)を出展した(画像:上海汽車集団)
上海モーターショーにおいて、上海汽車は、130台以上の新車(その約半数は新エネルギー車)を出展した(画像:上海汽車集団)

 電気自動車(EV)向け車載電池の主要原料であるリチウムの争奪戦が激しさを増している。その主戦場のひとつが、リチウム埋蔵量が集中している南米だ。特に、アルゼンチン、ボリビア、チリの国境地帯は「リチウム・トライアングル」と呼ばれ、各地に塩湖が点在している。

 リチウムの潜在埋蔵量は、

・ボリビア:2100万t
・アルゼンチン:1900万t
・チリ:980万t

で、この3か国で世界全体の6割を占めると推計されている。この3か国で左派政権が次々と誕生したことによって、いま中国企業の進出に拍車がかかっているのだ。

 南米のリチウムには、もちろん日本企業も注目してきた。早くから進出していたのが、トヨタ自動車グループの豊田通商(東京都港区)だ。

 同社は2014年にオーストラリアのリチウム資源開発会社オロコブレとともに、アルゼンチン北西部フフイ州オラロス塩湖でリチウムの本格生産を開始していた。オラロス塩湖は、湖水中のリチウム含有量が多いとされている。住友金属鉱山(同)もまた、アルゼンチンの塩湖でのリチウム生産を検討していると報じられている。

 ところが、2019年10月の大統領選で、左派のアルベルト・フェルナンデス氏が勝利してから、アルゼンチンでも中国が巻き返しつつある。2022年2月には、フェルナンデス大統領が中国を公式訪問、習近平国家主席との会談で一帯一路構想へのアルゼンチンの参加について合意した。

 こうしたなかで、同年7月には、中国のリチウム大手・ガンフォンリチウムが、同国サルタ州にあるふたつのリチウム塩湖の開発権を持つ企業の株式を、9億6200万ドル(約1310億円)を投じて100%取得した。すでにガンフォンリチウムは、2018年に豊田通商と同じフフイ州のオラロス塩湖と、カウチャリ塩湖でのリチウム開発権を取得している。

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