EV電池の主原料・リチウムを巡る「南米争奪戦」、どう見ても中国が絶対有利なワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(8)
- キーワード :
- 自動車, EV, 電池, 方法としてのアジアンモビリティ
急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。
欧米に抵抗する中南米

一方、潜在埋蔵量世界一のボリビアでは、2006年1月に先住民出身で左派のエボ・モラレス氏が大統領に就任し、リチウム産業の開発を進められたが、いまだ商業生産には至っていない。
同国では、2018年4月に国営鉱山会社が立ち上げた二酸化リチウム生産プロジェクトにドイツ企業が支援することが決まった。ところが、大規模な国民の抗議活動に直面し、ドイツ企業との契約は破棄された。
同国は、かつて宗主国スペインや外資系企業に鉱産資源を搾取された歴史があり、外資系企業の投資に対する警戒感が強いからだ。
モラレス政権は、米国との関係が悪化するなかで、2019年11月に発生した事実上のクーデターで失脚し、上院副議長のヘアニネ・アニェス氏が政権に就いた。しかし、2020年10月の大統領選挙では、モラレス派のルイス・アルセ氏が当選した。
アルセ大統領もまた、中国寄りの姿勢を強めている。例えば、2023年5月10日の記者会見で、アルセ大統領は国際貿易における人民元の使用に前向きな姿勢を示した。
こうしたなか、2023年1月、ボリビア国営リチウム公社(YLB)はEV電池生産で世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)などの企業グループとの提携を決定した。CATLはYLBとともにポトシ県ウユニ塩湖とオルーロ県コイパサ塩湖の2か所で、DLE技術を使用したプラントを建設する。
ウユニ塩湖は、未開拓のリチウム鉱脈のなかで世界最大級のひとつとされている。