タワマン乱開発の深刻な「副作用」 居住世代の偏向&来たる急激高齢化、持続可能な都市は本当につくれるのか?

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地価上昇は人口減少のなかで起こっており、全国で力強い需要が続くことは考えにくい。新たに発展する地域の裏には衰退する地域がある。持続可能な都市はつくれるのか。

いま求められる長期的な視点

日経新聞社編『限界都市 あなたの街が蝕まれる』(画像:日経BPマーケティング)
日経新聞社編『限界都市 あなたの街が蝕まれる』(画像:日経BPマーケティング)

 また、タワーマンションを建設する際にも、間取りは1LDK~5LDKまでを用意し、なるべく多様な世代が入居できるようにしているという。

 山万はユーカリが丘内の家族構成をほぼすべて把握しているといい、区画の平均年齢が上がると、虫食い状態になっている空き地に若い夫婦が好みそうな住宅を建てて、世代の偏りが生じないようにしている。

 山万の木戸一郎取締役は、本書で

「行政よりも早く人口動態や世帯構造を把握できる。これが大いに街づくりに役立っている」

と語っているが、行政をも上回るような長期的視点で街づくりがなされているのがユーカリが丘の特徴だといえる。

 このほかにも本書では、中心部の移動手段を徒歩、自転車、路面電車に限定し、自動車を極力排除したドイツのフライブルクの事例も紹介されている。車での移動が前提となると、都市圏が大きく拡大してしまうため、できるだけ車を排除した街づくりを進めているのだ。

 もちろん、車が必要不可欠な交通手段となっている現在の日本の地方では、車を排除した街づくりというのは現実的ではないが、今後の都市計画においては、公共交通機関でカバーできる都市のサイズを意識することが必要になってくるだろう。

 それとともに、人口減少社会のなかで、今よりも長期的な視点にたった国や地方自治体による規制も考えなければならないかもしれない。本書は現在の日本の街づくりの問題点と将来のあり方について、さまざまなことを教えてくれる本である。

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