タワマン乱開発の深刻な「副作用」 居住世代の偏向&来たる急激高齢化、持続可能な都市は本当につくれるのか?
地価上昇は人口減少のなかで起こっており、全国で力強い需要が続くことは考えにくい。新たに発展する地域の裏には衰退する地域がある。持続可能な都市はつくれるのか。
山万の企業戦略

山万では、バブル期の1990(平成2)年にタワマン1棟が1日で売れたことがあったという。営業担当が「もっと売りましょう」というなか、嶋田哲夫社長は「山が高ければ谷は深くなる。売るのはもうやめよう」と答え、営業部門は残りの日々をひたすら研修で過ごした。
山万は、一度に大量の住宅を売り切ってしまうと入ってくる世代が似通ってしまい、その結果として
「一定の時期になると街の高齢化が急速に進む」
ことを危惧し、分譲を少しずつ進めるという方針を堅持したのだ。
さらにユーカリが丘のユニークな点は、分譲物件だけでなく、新交通システムのユーカリが丘線をはじめとして、主要な施設のほとんどが自前である点だ。ホテル、保育所、老人福祉施設もグループで手掛けている。
日本では鉄道会社が宅地の分譲などの開発を行うケースが多いが、山万は異業種からの鉄道事業への参入という珍しいケースになっている。
多様な世代に住んでもらうための工夫も行っており、そのひとつが「ハッピーサイクルシステム」という住宅の買い取り制度だ。
エリア内で住民が山万の分譲住宅に引っ越す場合は、既存の住宅を査定額の100%で山万が買い取る。山万はこれを改修して、中古住宅として新築の7割程度の額で売り出している。これによって子育てを終えた世代が一戸建てからユーカリが丘内のマンションに移り住み、その一戸建てに若い世代が入居するということも起きているのだ。