船の“自律航行”実現近い? 「EVロボティックボート」体験 効率◎な海上移動の可能性

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水上モビリティの自律航行システムを手掛けるエイトノットの「EVロボティクスボート」を体験。目的地を設定するだけで自動航行、桟橋には充電システム――効率的な移動を実現する水上インフラが現実味を帯びてきている。

自律航行の実現で大きく変わる都市、そして離島

 例えば大阪のユニバーサルスタジオジャパン(USJ)と海遊館の間を移動する場合、天保山渡船を使用すればわずか数分で目的地にたどり着けるが、電車を使用した場合は地下鉄とJRを乗り継いで20分から30分かかる。東京でも再開発が進む晴海や豊洲などウォーターフロントでは水上交通のポテンシャルが非常に高い。

 瀬戸内海を隔てた広島~松山間の場合、水上移動距離では85km程度なのに対し、陸上移動距離は186kmと倍以上かかる。CO2を排出しないゼロエミッションの電動船によって海上を直線で結べるようになれば、環境に配慮しつつ効率的な移動が出来るようになることが期待される。

 他方、全国300か所ある生活航路のうち3分の1以上が赤字で、国や自治体からの補助金で事業を維持しているという現状がある。加えて島外へ出る航路が1日に7便程度しかない場所もあり、木村社長は「生活のリズムが船の時刻表に合わせて作られている状態で、これを逆転させる必要がある」と強調する。

「小型船舶の自律航行でコストを削減し、離島航路を持続可能なものに変えていく。サービスはタクシー配車アプリの海版のようなものを検討中だ。生活者にとっては予約した時間に船に取り込むことができ、生活に自由が生まれる」(木村社長)

 エイトノットは2021年8月から10月にかけ、広島県大崎上島町でEVロボティックボートによる実証実験を行った。往路では大崎上島から生野島に向けて日用品を運搬し、復路では生野島から回収した家庭ごみの輸送を実施した。

 2022年には浜名湖でEVロボッティックボートより2回りほど大きい船を使用し、観光を切り口にした実証実験を行うことを計画中だ。

「船員の減少と高齢化が進む中、観光事業者からは事業を拡大したいのに人がいないから運航できないという声が上がっている。そういった部分を技術で補うことによって発展させていきたい」(木村社長)

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