船が洋上で出すCO2ほぼ純度100%で回収に成功 装置の実用化へ一歩前進 三菱重工

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三菱重工の子会社、三菱造船が実証実験を行っている船舶向けの洋上CO2回収装置が、ほぼ純度100%での二酸化炭素を生み出すことに成功したとのこと。しかも船舶用の設計ではなく陸上装置の転用だそう。

船舶搭載の洋上用CO2回収装置は陸上向けの転用

洋上でのCO2回収実証試験(画像:三菱重工)。
洋上でのCO2回収実証試験(画像:三菱重工)。

 三菱重工グループの三菱造船株式会社(横浜市西区)は、川崎汽船ならびに日本海事協会と共同で進める洋上用CO2回収装置の検証プロジェクト「CC-Ocean(Carbon Capture on the Ocean project)」において、実際に船舶へ搭載したCO2回収小型デモプラントを用いての船舶エンジンから出る排ガスからCO2(二酸化炭素)を分離・回収した結果、回収CO2純度を99.9%以上にまで高めることに成功したと発表した。

 このプロジェクトは、川崎汽船が運航する東北電力向けの石炭運搬船「CORONA UTILITY」にて実施しているもので、得られたデータは洋上用CO2回収装置の実用化に向けたベンチマークにするとのこと。なお今回、搭載したCO2回収小型デモプラントは、陸上プラント用装置を洋上用に転用したもので、計画通りのCO2回収率を洋上で得られたことで、舶用システムとしても実用化への可能性が高まったとしている。

 今回の実証実験は、8月上旬にCO2回収小型デモプラントを本船に搭載した後、三菱造船の技師が乗船し、同プラントの運転やメンテナンスといった操作指導を「CORONA UTILITY」の乗組員に行っている。加えて、排ガスおよび分離・回収したCO2の計測・分析、評価などを行う形でスタート。

 9月中旬から2022年3月末までは、一般乗組員が商用運航中にCO2回収を行う世界初の試みを行い、本船乗組員自身の手による同プラントの運転、計測などを引き続き実施しているそうである。

 CO2は、産業ガスとして様々な分野で用いられているものの、これまでは一から生産していた。純度の高いCO2を排出ガスから精製できるようになると、カーボンニュートラルや資源確保の観点などからメリットが大きいといわれている。