日本の船舶開発、もはや「中韓」に絶対負けられない土壇場事情【連載】方法としてのアジアンモビリティ(6)
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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。
かつての一大産業

いま、日本の造船メーカーは「背水の陣」を敷いて次世代燃料船の開発を急ピッチで進めている。この分野の開発競争で中国や韓国に負ければ、後がないからだ。造船・海運分野の競争力強化は国家的な課題でもあり、2021年5月には「海事産業強化法」が公布されている。
かつて造船業は、日本の高度経済成長を支える一大産業だった。日本の造船業は1950年代から順調に成長し、1973(昭和48)年には造船竣工量が1419万総t(船の外板の内側から外板の内側まで全ての容積)に達し、世界シェアの48.5%を占めた。
同年秋の第一次オイルショックを境に、タンカーの供給過剰が深刻化し、日本の造船業界も設備縮小を余儀なくされたが、それでも建造量世界首位の座を守ってきた。
ところが、1980年代に入ると、韓国の造船メーカーが台頭し始め、さらに2000年代に入ると、中国の造船メーカーが急速にシェアを拡大し始めた。そして、2000(平成12)年に韓国に建造量首位の座を奪われ、2009年には中国にも抜かれた。
日中韓の価格競争が激しさを増すなかで、韓国と中国では業界再編が進んだ。韓国では2019年3月に現代重工業が大宇造船海洋を買収することで最終合意。中国でも、2019年11月に1位の中国船舶工業集団と2位の中国船舶重工集団が経営統合し、中国船舶集団(CSSC)が設立された。