日本の船舶開発、もはや「中韓」に絶対負けられない土壇場事情【連載】方法としてのアジアンモビリティ(6)

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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。

JMUと今治造船が手を組んだワケ

日本シップヤードのウェブサイト(画像:日本シップヤード)
日本シップヤードのウェブサイト(画像:日本シップヤード)

 こうした中韓の業界再編の動きに対して、日本の造船会社が手をこまねいてきたわけではない。2021年には、今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)が共同で船の設計や営業をする新会社・日本シップヤード(NSY)を設立している。

 JMUは2013年に、日本鋼管(現JFEホールディングス)と日立造船の造船事業を統合したユニバーサル造船、IHIグループのアイ・エイチ・アイマリンユナイテッド(IHIMU)が統合して誕生した。これまで、

「水と油」

の関係と言われていたJMUと今治造船が手を組んだのも、このままでは日本の造船業界が沈没してしまうという危機感の表れと見られている。

 中韓との競争が厳しくなるなかで、起死回生のチャンスと期待されているのが、次世代燃料船の開発というわけだ。この開発競争で勝利しなければ、復活のチャンスを逃すことになる。

次世代燃料船開発への追い風

国際海事機関のウェブサイト(画像:国際海事機関)
国際海事機関のウェブサイト(画像:国際海事機関)

 次世代燃料船開発の追い風になっているのが、国連の専門機関、国際海事機関(IMO)が、外航船の船舶から出る温暖化ガスを50年までに実質ゼロにする国際目標を採択したことだ。

 次世代燃料船の開発機運が盛り上げるなかで、2022年4月には、国土交通省は、民間事業者、有識者、関係省庁等から構成される「国際海運2050年カーボンニュートラルに向けた官民協議会」を設置し、CO2を排出しないゼロエミッション船の開発を推進してきた。

 ゼロエミッション燃料として期待されているのが水素だ。すでに水素は、自動車用途や発電用途などで活用が進みつつあり、船舶のエネルギーとしても期待されている。

 ただし、水素には、容易に着火できるものの、そのまま激しく燃えてしまうという特性がある。そのため、燃焼を制御することが難しい。

 また、水素は重油と比較してエネルギー密度が低いので、重油と同量の熱量を得るためには

「4.5倍」

の容積が必要となる。つまり、船舶で水素を燃料とするためには、高度な燃料制御技術によって

・新たなエンジンを開発
・効率的に水素を積み込めるような省スペース化

を実現する必要がある。

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