世界で縮小「鉄道の食堂車・車内販売」 薄れていくその必要性 欧州は地域で差
ヨーロッパの鉄道でも縮小進む食堂車・車内販売
日本の鉄道では、グルメ列車のような観光要素の強い列車を除き、誰でも気軽に利用できる食堂車はほとんど姿を消している。唯一、それらしいサービスを行っているのは、近鉄の特急「しまかぜ」と、JR東日本の「サフィール踊り子くらい」で、これらも食堂車というよりは喫茶室に近いスタイルだ。鉄道の車内で食べる食事の楽しみは、もう車内販売で買う駅弁くらいしか残されていない――と、思っていたのも束の間、合理化による廃止の波は車内販売にも及んだ。
すでに在来線の特急列車のほとんどで車内販売は中止され、新幹線も多くの列車は缶やペットボトルの飲料とスナック菓子程度しか扱わなくなっている。今後、日本の列車では、事前に飲み物や食べ物を用意することを忘れた場合、下車駅まで空腹に耐える覚悟をしなければならなくなるかもしれない。
車内販売はサービスの一環として行っているとはいえ、まったく売り上げがないものを継続させることはなかなか難しい。日本の場合、近年はコンビニエンスストアや駅売店が充実し、一方で大きい駅の駅ビルには多数のお弁当屋や総菜屋が軒を連ねており、それらが車内販売の売り上げ減少に少なからず影響を与えたことは間違いない。そこにコスト削減という事情が重なったことが、車内販売縮小へ至った原因だろう。食堂車に至ってはコストがかかりすぎて、採算を考えたら営業はまず不可能だ。
ただし、これは何も日本だけで起きていることではない。今も食堂車や車内販売が残るヨーロッパでも近年、両方とも減少傾向にある。
ヨーロッパでは日本と同様、高速列車や特急、急行といった優等列車には食堂車の連結、もしくは1等車だけに食事サービスが提供され、それ以下の地域間快速には売店もしくは車内販売が車内にあった。ところが食堂車の営業は徐々に廃止され、車内販売へと切り替わり、地域間快速列車は車内販売が廃止されていった。