世界で縮小「鉄道の食堂車・車内販売」 薄れていくその必要性 欧州は地域で差
日本の鉄道と同様に、欧州の鉄道でも食堂車や車内販売が縮小している。一方で、中欧地域ではいまもサービスが充実しているなど、地域でも差が生じている。背景にあるのが技術の進歩。今後、再びサービスが活発になる日は来るのだろうか。
「高速化」と「旅の楽しみ」はトレードオフ?
ドイツ鉄道に限らず、これまで食堂車にはシェフが乗車し、その場で調理をしていたが、シェフを雇うにはコストが掛かるため、シェフではないスタッフが簡単に提供できるレンジ調理のメニューが増えた。また、列車の高速化によって食堂車を利用できる時間が減少したことから、コース料理のようなものを止め、気軽に食べられる軽食やサラダのようなものを中心としたメニューを切り替えた。数年前にドイツ鉄道食堂車で販売を始めたチリコンカンやカリーブルスト(カレーソーセージ)は、手軽に食べられるメニューとして人気を博し、2017年にはチリコンカンが20万食、カリーブルストが23万食も売れた。
一方、中欧諸国の食堂車や車内販売は、もっと充実している。その理由は明らかで、まず高速列車が発達していないため乗車時間が比較的長くなることと、駅構内に日本のような食品を多く扱う店舗が充実しておらず、駅によっては売店すらない所もあるから、供食設備が必要不可欠だからだ。食堂車にはシェフが乗務し、その場で調理した温かい食事が提供されるし、車内販売も頻繁に回ってくる。こちらも採算度外視だろうが、利用客は比較的多いと感じる。
現在、世界中で環境問題が声高に叫ばれ、鉄道を使った旅が注目を集めている。かつて廃止された、比較的長距離を走る列車も復活の兆しを見せているが、そうなると供食設備は必要不可欠になる。ヨーロッパを中心に、環境問題と関連した長距離列車の復活に合わせ、いったん廃止された食堂車や車内販売が再び脚光を浴びる日が訪れるかもしれない。