物流業界“賃上げ”歓迎ムードも 「業務委託」がさらに加速? 働き方の多様化か、それとも労働力の搾取か
運送会社の値上げは、昨今の燃料価格の上昇や、ドライバーをはじめとした従業員の待遇改善のため不可避の面がある。一方で、送料無料サービスを行っている通販サイトや、物流コスト削減でしのぎを削っている業界は対応を迫られることとなる。
米国の物流業界賃上げと値上げ

先月、米国の全米自動車労働組合(UAW)が、4年間で約40%の賃上げを要求しているというニュースがあった。実は、大幅な賃上げを要求しているのは自動車業界だけにとどまらない。米国の貨物運送会社ユーピーエスは、「ドライバーの1年あたりの賃金を17万ドル(約2500万円)とすることで労働組合と合意した」と、8月中旬に公表した。現行の同じ条件のドライバーの年間の賃金は、「14万5000ドル(約2100万円)」であり、2割弱の賃上げとなる。この金額は、健康保険の費用を含むとともに、5年間の契約終了後に適用されるとのことである。
この報道が流れると、ユーピーエスは米国で最も人気のある会社となり、求人ポータルサイトのインディードでは、前の週と比較して50%も検索がアップした。また、Googleでもユーピーエスが検索用語として増加した。ただし、ユーピーエスのドライバーになるには、配送センターで荷物の積み込みからスタートして数年かかる。
もちろん、この賃金を実現したのは、高いインフレ率を背景に
「ストライキも辞さない」
と交渉した労働組合の成果だ。一方で、ユーピーエスは今後5年間で300億ドルの追加の費用がかかるとしている。
同じく米国で貨物運送業を営むフェデックスは、ユーピーエスの直接雇用に対し、個人事業主との請負契約をベースとしており少し事情が異なる。しかし、時給換算でユーピーエスは49ドルとなるのに対し、フェデックスは20~25ドルと大きく差が開いた。フェデックスの今後の対応が注目されている。
なお、ユーピーエスは2022年に配送料金を見直したばかりであり、今のところ運賃改定の話は出ていないが、一方のフェデックスは、2024年1月から値上げを予定している。