ブルーインパルスは大丈夫? イタリア曲技機墜落&女児死亡に見る「鳥衝突リスク」とは

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イタリア空軍のアクロバット・チーム「フレッチェ・トリコローリ」が、トリノ・カゼッレ空港を編隊で離陸する際、1機が墜落した。ブルーインパルスは大丈夫か。

鳥吸い込みリスクと双発機

フレッチェ・トリコローリ(画像:アレックス・ミシェウ)
フレッチェ・トリコローリ(画像:アレックス・ミシェウ)

 エンジンに鳥を吸い込んだ場合、最前方のブレード(羽根)に当たった鳥は、回転するブレードによってスライスされて粉々になり、衝突によってつぶれ、ほとんど液状化してしまう。その際、衝突の状態によってはブレードが破壊され、エンジンの致命的故障に至る。

 飛行機の国際的な設計基準では、衝突を考慮する鳥の質量(重さ)を原則4ポンド(約1.8kg)と規定しており、エンジンの開発においても、運転中の試験エンジンにニワトリなどをぶつける試験などが行われる。

 こうした試験で一定の安全性は確認されるが、それでも完全に保証を行うことは不可能だ。ブレードへのダメージは、衝突した鳥の質量、ブレードへの衝突箇所、衝突の速度などによっても異なり、対策や検証には限界がある。

 エンジンが2基以上ある双発機では、片方のエンジンを鳥吸い込みで失っても、もう片方のエンジンで飛行継続が可能になっている。事実、旅客機が片方のエンジンに鳥を吸い込んで緊急事態を宣言する事態は、日本国内でも数多く発生しており、世界的に見れば茶飯事とさえいえる。

 双発機であっても、鳥の群れに突っ込んで両エンジンを損傷すれば、全推力を失うことになる。アメリカでA320が川へ不時着した「ハドソン川の奇跡」と呼ばれる事故も、離陸時に鳥の群れを両エンジンに吸い込んだために起きた。

 つまり、鳥衝突による推力喪失を防ぐ根本的な対策は、鳥を駆除することしかない。そのため世界各地の空港では、空港敷地内に鳥の生息環境を作らない工夫や、空砲や猛禽(もうきん)類による鳥の排除が行われているが、生き物相手に完璧な対策は不可能なのが実情だ。

 軍用機の場合は今回のように単発機も多く使用されており、鳥衝突が発生した場合のリスクは旅客機以上に大きい。

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