ブルーインパルスは大丈夫? イタリア曲技機墜落&女児死亡に見る「鳥衝突リスク」とは
イタリア空軍のアクロバット・チーム「フレッチェ・トリコローリ」が、トリノ・カゼッレ空港を編隊で離陸する際、1機が墜落した。ブルーインパルスは大丈夫か。
鳥衝突に備えた機体設計

当たり前だが、鳥が飛んでいない高空なら鳥衝突は発生せず、そのリスクは離着陸時を含む低空飛行時にある。特に、低空を高速で飛行する曲技飛行や、対地・対艦攻撃任務の低空飛行で、そのリスクは深刻だ。
そのため日本でも、対艦攻撃を主任務とする航空自衛隊のF-2戦闘機の開発や、T-4ブルーインパルス仕様機の開発において、特に鳥衝突対策を取り入れた設計を行った。
「ブルーインパルス」の使用機T-4は双発練習機で、鳥の吸い込みによる推力完全喪失のリスクは、旅客機と大きな違いはない。その意味では、もともと今回のような事態に対する耐性は高い。
鳥衝突の危険性はエンジンへの吸い込みだけでなく、衝突による機体へのダメージもあり、特に風防に鳥が当たった場合の危険性は重大である。比較的速度の低い離着陸時は大丈夫でも、アクロバット飛行の速度がその3倍だとすると衝突エネルギーは9倍になり、鳥が風防を突き破ってパイロットを直撃すれば墜落事故は免れない。
こうしたことから、ブルーインパルスで使用するT-4については、高速飛行時の鳥衝突に耐える風防が装備されているし、その前に開発されたF-2戦闘機でも、低空での対艦攻撃任務を想定した強化風防が装備されている。
今回のフレッチェ・トリコローリ機の事故はアクロバット中に発生したものではなく、どんな機種にも共通したリスクがあるのだが、取りあえずブルーインパルスに関しては、同種のリスクは低いといっていいだろう。