三陸鉄道のアイデア勝ち 「シカ被害」を観光資源に大転換したナイスな企画“ナイトジャングルトレイン”をご存じか
近年、シカが増えている。農林業への被害だけでなく、列車との衝突事故も増えており、JR身延線(富士~甲府間)では2022年度に列車とシカの衝突事故が300件に達し、過去15年間で最多となった。
独自路線の可能性

三陸鉄道はかつて東日本大震災で地震と津波の被害を受けた。しかし、震災の5日後には「地域のために」と、被害の少なかった区間で無料運転を開始。
2014年には全線で運転を再開したが、2019年の台風19号で再び被害を受け、7割が不通となった。しかし、わずか5か月で復旧し、2021年には東京オリンピックの聖火を宮古から釜石まで運ぶ「聖火ランナー」としても活躍した。
何度も経営危機に陥った三陸鉄道だが、その裏には常にさまざまな工夫があった。震災時には、被災したレールを加工して販売したり、男性鉄道員のキャラクター化プロジェクトを立ち上げたりするなど、復興に向けて尽力した。前述したように、以前からイベント列車の企画も多数あり、ネスレ日本や京都の叡山電鉄など、他社とコラボした三陸鉄道の支援プロジェクトもある。
ナイトジャングルトレインが直接、シカとの接触事故件数の減少につながるわけではない。しかし、観光客にもシカにも優しい取り組みの好例である。今後もシカ対策は続くだろうが、三陸鉄道にはユニークで斬新な取り組みで、新しい世界を見せてほしいものだ。