三陸鉄道のアイデア勝ち 「シカ被害」を観光資源に大転換したナイスな企画“ナイトジャングルトレイン”をご存じか

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近年、シカが増えている。農林業への被害だけでなく、列車との衝突事故も増えており、JR身延線(富士~甲府間)では2022年度に列車とシカの衝突事故が300件に達し、過去15年間で最多となった。

獣害か観光資源か

シカの親子(画像:関東森林管理局)
シカの親子(画像:関東森林管理局)

 数年前、筆者(もりあやこ、調査測量系ライター)も野生動物調査の一環で山間部のシカを観察したことがある。谷反対側の山の斜面が伐採されて草原になっており、数十頭のシカが「ウジャウジャ」ともいえる群れでのんびりと草を食(は)んでいた。

 2021年度末の本州以南のシカの個体数は約222万頭と推定されている。環境省は2013年、農林業に大きな被害をもたらすイノシシとシカの個体数を10年間で半減させる目標を掲げた。イノシシは着実に減少しているが、シカは依然として個体数が多く、狩猟が強化されることになる。

 こうしたシカの増加を背景に、前述のように鉄道各社はシカ対策を迫られてきた。三陸鉄道も例外ではなく、2021年度のシカとの衝突事故は162件で、これは2日に1件に相当する。対策としてネットやロープが張られているが、それを飛び越えるシカもいて対策は難航している。

 この「厄介者」を観光資源に変えることに成功したナイトジャングルトレインのアイデアは、他社から三陸鉄道に転職してきた若手社員の発案だった。2023年も三陸鉄道の公式フェイスブックで告知したところ、鉄道ファンから「行きたい」という声が上がり、最終回は満席となった。

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