テスラ「自動運転タクシー」の潜在価値は130兆円 路地の多い日本でビジネス成り立つのか
投資銀行の見解

さて、カナダ有数のメガバンクであるカナダロイヤル銀行系列の投資銀行RBCキャピタルマーケッツは、自動運転タクシー市場に関する興味深いリポートを発表した。
それによると、自動運転タクシーの市場は将来、全世界で8700億ドル(約128兆円)に達する可能性があるという。しかも、これはあくまでテスラが発表したビジネスモデルに基づくものだという注意書きが含まれている。
ここで重要なのは、テスラが現時点で自動運転タクシー事業に参入していないという事実である。もちろん、事業計画自体は2019年4月に、テスラ独自の自動運転タクシー事業「テスラネットワーク」が翌年の2020年半ばに運行を開始すると発表されていた。しかし、この計画は実現しなかった。ちなみに、イーロン・マスク自身は2023年半ばの時点で、より優れた制御システムの開発を続けていると述べており、計画そのものが頓挫したわけではない。
テスラの自動運転タクシー事業がまだ始まっていないのは、おそらくテスラ社内の事業優先順位によるものだろう。また、現在この事業のトップランナーであるグーグルのウェイモとGMのクルーズが、混雑した混合交通のなかで自動運転タクシーを正確に制御することに苦戦していることも原因かもしれない。
つまり、後発組である以上、少なくとも完成度では先発組を大きく上回らなければ意味がない。テスラにとっては、事業価値を損なわずに事業を開始するために、システムの完成度を高める努力をしているということなのかもしれない。
もちろん、これらはテスラのこれまでの経緯を考慮した上での推測にすぎない。しかし、カナダ有数のメガバンクの一翼をなしている投資銀行が、会社の将来性についてそれなりの保証に等しいリポートを出すということは、投資銀行ならではの一定の情報網に裏打ちされたものだろう。