三菱自動車が生んだ「マレーシア国民車」 いまや“中国の支援”で大躍進していた【連載】方法としてのアジアンモビリティ(5)
- キーワード :
- 自動車, マレーシア, プロトン, 方法としてのアジアンモビリティ
新エネルギー車投入による攻勢

マレーシアの国民車メーカー・プロトンの販売が好調だ。2023年上半期(1~6月)の同社の新車販売台数は、前年同期比32.4%増の7万6012台に達した。
今、プロトンは新エネルギー車(NEV)の投入によって攻勢をかけようとしている。同社は2023年2月、NEVの展開に向けた概略ロードマップを発表し、自社ブランドのハイブリッド車(HV)を販売し、その後、主軸を電気自動車(EV)に移すと表明した。
こうしたプロトンの攻勢を強く支えているのが、大株主である中国自動車大手・吉利汽車(ジーリー)だ。プロトンは2022年8月、吉利と独ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツが折半出資する智馬達汽車(スマート・オートモービル)のモデルを、マレーシアとタイで販売すると発表している。
そして今、プロトンが吉利との関係強化を加速させているのは、アンワル政権の方針と密接にかかわっているようだ。2022年11月に首相に就いたアンワル氏は、親中路線を鮮明にしているからだ。彼は、就任会見で
「最大貿易国の中国との関係を強化したい」
と明言している。
2023年4月に中国を訪問したアンワル首相は、帰国後の会見で、中国から総額1700億リンギ(約5兆1000億円)に上る投資を確保したと発表している。
このアンワル首相の訪中に合わせ、プロトンの親会社DRB-ハイコムは、重大な発表をしている。4月1日、ペラ州タンジュンマリムの自動車製造拠点「オートモーティブ・ハイテクノロジー・バレー(AHTV)」開発において、吉利と協力することに基本合意したと公表したのだ。404万6900平方メートルの面積を持つAHTVは、NEVの研究・開発から部品製造、車体製造などが集積する一大拠点となる予定だ。
さらに、アンワル首相は5月7日、プロトン初のNEV新モデル「X90」の発表会に出席した。X90は、同社が吉利と協力して発売した「X70」「X50」に続くスポーツタイプ多目的車(SUV)だ。
この発表会であいさつに立ったアンワル首相は、吉利がプロトンと研究開発をめぐる協力を強化し、マレーシア自動車業界のNEVへのシフトに助力するよう期待していると述べた。マレーシア自動車産業の中国シフトを印象づけた瞬間だった。