JRの廃線時対応「十分でない」 地方から聞こえる恨み節、国交省が改正地域交通法に異例の文言を入れたワケ

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国土交通省と総務省は8月末に告示した改正地域公共交通法の基本方針に、鉄道廃線後もJR各社が公共交通維持に協力するよう求める文言を入れた。背景に何があったのか。

JR自身が代替バス運行も

JR西日本のウェブサイト(画像:JR西日本)
JR西日本のウェブサイト(画像:JR西日本)

 こうした疑問に国が出した答えが8月末、官報で告示した改正地域交通法の基本方針に明記された。10月施行の改正法で目玉となる再構築協議会に関連し、JR各社に対してバスなどへの転換が決まった場合でも運行などに十分な協力をするよう求める文言を盛り込んだことだ。

 再構築協議会は利用が低迷した路線の鉄道事業者、または沿線自治体の要請で国が設置し、存廃を含めて議論する新制度。JR西が岡山県と広島県を走る芸備線のうち、岡山県新見市の備中神代(こうじろ)駅から広島県庄原市の備後庄原駅まで68.5kmについて設置を求める考えを明らかにしている。

 基本方針では、再構築協議会で議論した結果、廃線でバスなど他の交通手段に転換された場合、JR各社は沿線自治体などと連携し、持続的な運行に向けて十分な協力を行うべきだとした。

 具体的な手段としては、

・JR各社のグループ会社によるバス運行
・JR各社から地元企業への運行委託
・代替交通運行会社への共同出資

を挙げている。さらに、廃線後も地域振興に協力し、地域との関係を継続することを盛り込んだ。

 国交省鉄道事業課は、

「廃線になったら、地域とJR各社の関係が終わるわけではない。地方を取り巻く環境は人口減少の加速で厳しさを増している。JR各社には地域の公共交通維持に向けてこれまで以上に尽力してほしい」

と狙いを語った。

 再構築協議会に対し、JR各社はおおむね歓迎の意向を示しているが、路線を維持したい地方には

「廃線のセレモニー(儀式)」

になりかねないとして強い警戒感がある。全国知事会が7月、JR各社が地域公共交通の持続的運行に最大限協力するよう求める要望を国交省に提出しただけに、地方の声に配慮する思惑もあると見られる。

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