JRの廃線時対応「十分でない」 地方から聞こえる恨み節、国交省が改正地域交通法に異例の文言を入れたワケ
国土交通省と総務省は8月末に告示した改正地域公共交通法の基本方針に、鉄道廃線後もJR各社が公共交通維持に協力するよう求める文言を入れた。背景に何があったのか。
運転士不足がバス転換の壁に
バス会社の運転士不足でバス転換を簡単にできなくなりつつある事情も影響している。地方では運転士不足で路線バスの減便が続出している。原因は若者が運転士を敬遠するからだといわれるが、鉄道が廃止されるような過疎地域ではそもそも若者がいない。運転士確保は至難の業だ。
鉄道が大赤字の区間にバスが運行したからといって、黒字になるはずがない。赤字は自治体が補てんしても、結局はプラスマイナスゼロの収支にしかならない。廃線が相次いだ北海道では、代替バスの確保に苦労した話をよく聞くが、自社路線の運行もままならないなか、あえて他の地域から火中の栗を拾いに来るバス会社がないのも当然といえる。
「鉄道の代替交通 = バス」
と安易に決められない時代になった。路線バスの代替交通となる予約型のデマンド交通は、多くをタクシー会社が運行している。タクシーの乗務員不足はバス以上に厳しい。代替交通が確保できないことさえ考えられる。
JR西は
「公共交通事業者としてより良い交通体系の実現に協力したいと考えており、再構築後の交通プラン立ち上げ・運営に際し、費用負担の問題も含めて一定の役割を果たしていくことは大切と認識している」
と述べた。
JR各社は民営化で営利企業に生まれ変わった一方で、高い公共性を持つことに変わりない。例え廃線になっても地域にとどまって住民や自治体に寄り添い、知恵と力を貸すことが求められている。