日産の苦悩 「ルノーEV新会社」への出資メリットは本当にあるのか? 技術流出の懸念も

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ルノーがEVとソフトウエア専門の新会社「アンペア」の設立を発表し、日産がそれに対して15%出資することを発表した。これはEV化の動向を象徴するひとつの出来事だといえる。

不平等条約を解消したい日産

日産自動車グローバル本社(画像:日産自動車)
日産自動車グローバル本社(画像:日産自動車)

 そういった意味では、ルノーが設立したアンペアに対して日産が出資することは、両社の利害関係が一致した結果であると見ることができる。

 ルノーからの出資比率を40%未満に引き下げたい日産は、ルノーからの出資比率を15%に引き下げてもらう代わりに、ルノーの新会社であるアンペアに最大6億ユーロ(約930億円)を出資し、株式の15%を取得することで合意。

 加えて日産は取締役ひとりを派遣し、ラテンアメリカ・インド・欧州でのプロジェクトについても両社で検討していくことに合意した。これにより日産の悲願であった資本関係の対等化が実現されることになる。

 一方のルノーは、ロシアのウクライナ侵攻により第2主要市場であったロシア市場からの撤退を余儀なくされ、戦略領域と位置付けるEV領域は日産の技術支援に頼る部分が大きく、生き残りにかける危機感を募らせていた。こうした背景もあり、今回の合意に至ったと見られる。

日産のEV市場での立ち位置

リーフのウェブサイト(画像:日産自動車)
リーフのウェブサイト(画像:日産自動車)

 日産は、2010(平成22)年に発売したバッテリー式電気自動車(BEV)である「リーフ」で、EV市場のパイオニアとなった。

 世界初の量産EVとして知られるリーフは、2023年までに世界で累計65万台以上が販売された。2020年頃までは

「世界で最も売れたEV」

として知られていたが、その座はテスラ「モデル3」に2020年頃明け渡すことになる。

 日産は現在、テスラ、フォルクスワーゲン・グループ、さまざまな中国メーカーを含む他のメーカーとの激しい競争に直面しており、当初独走状態であったEVセグメントにおける日産の市場シェアは、他メーカーの新規参入やラインアップの拡大によって減少傾向となっている。

 そうした状況にあって、日産はより一層EV開発への注力度合いが増している。日産は長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を2021年に発表。2026年までの5年間で電動化に約2兆円を投資、2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種の電動車を投入することでグローバルの電動車比率を50%以上へ拡大し、全固体電池を2028年度に市場投入することを掲げた。

 また2023年7月29日には日系自動車メーカーで初めて、テスラの急速充電規格「NACS」を北米で2025年から採用すると発表し、日本発の規格である「CHAdeMO(チャデモ)」にこだわらず、北米市場におけるEV市場拡大を優先させる方針を打ち出した。

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