日産の苦悩 「ルノーEV新会社」への出資メリットは本当にあるのか? 技術流出の懸念も

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ルノーがEVとソフトウエア専門の新会社「アンペア」の設立を発表し、日産がそれに対して15%出資することを発表した。これはEV化の動向を象徴するひとつの出来事だといえる。

日産・ルノー連合

ルノーのウェブサイト(画像:ルノー)
ルノーのウェブサイト(画像:ルノー)

 日産とルノーの提携の歴史は、両社が戦略的パートナーシップを結んだ1999(平成11)年にまでさかのぼる。これは日産が約2兆円の負債を抱え、深刻な経営危機に陥っていた時期であった。

 ルノーは6000億円を超える資金を投じて日産の株式を約37%取得し、経営再建にカルロス・ゴーン氏を送り込んだ。ゴーン氏は日産を3年で再建する計画「日産リバイバルプラン(NRP)」を2年で実現して見せ、日産を倒産寸前の状態から見事なV字回復を成し遂げさせたという実績を持つ。

 その後、ルノーは日産への出資比率を43%にまで高め、日産はルノーの株式15%を保有しているが、フランスの法律によって40%以上の出資を受け入れている子会社の議決権は認められておらず、実質上ルノーが日産の経営権を握るという、いびつな提携関係が20年近く続いてきた。

「いびつな」と書いたのは、この提携関係が現在は日産にとって不平等なものになっているからである。前述のとおり、経営危機に陥っていた日産は、ルノーからの出資とカルロス・ゴーン氏による経営立て直しによって2年でV字回復を遂げ、4年でそれまで抱えていた有利子負債をすべて解消した。2017年には提携開始から18年で売り上げも約6兆円から約12兆円へと倍増した。

 売上高も利益もルノーを大きく上回る日産が、長年にわたって多くの利益を

・持ち分法利益
・配当

という形でルノーに納めてきた。

 しかし日産はルノーの議決権もなければ、EV・自動運転・コネクティッドといった自動車の新たな競争領域においても技術的に日産がルノーを支える面が大きく、日産への見返りは少ない状況であった。

 なお、2016年に燃費データ改ざんなどの問題により経営危機に陥っていた三菱自動車に対して日産が出資し、三菱自動車の34%の株を日産が保有。これによりルノー日産連合は、ルノー日産三菱連合の3社連合へと提携が拡大し、世界第4位の販売台数を誇る世界最大手の自動車グループのひとつとなっている。

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