日産が「テスラの充電規格」を採用、これはいったい何を意味するのか

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日産は2023年7月19日、2025年から北米市場に供給する車両において、これまでのCCS1に加えてNACSを採用すると発表した。NACSへの変更は段階を通じて実施される。今後の勢力図はどう変わるのか。

自動車メーカーの事情

日産自動車グローバル本社(画像:日産自動車)
日産自動車グローバル本社(画像:日産自動車)

 電気自動車(EV)の普及にあたりポイントとなるのは、充電設備の拡充・進化だ。これはEVが市場に流通し始めた頃からいわれていることだ。現在EVを愛車としている人、今後導入を考えている人の双方にとっても、気になる条件だろう。

 現在、市販のEVで採用されている充電設備機器とそのコネクタ規格は地域別にいくつかある。具体的には次のとおりである。

●日本
・普通充電器:J1772タイプ1
・急速充電器:CHAdeMO

●北米
・普通充電器:J1772タイプ2
・急速充電器:CCS1

●欧州
・普通充電器:Mennekesタイプ2
・急速充電器:CCS2

●中国
・普通充電器:GB/T
・急速充電器:GB/T

である。

 これらのほか、テスラは自社独自の規格であるテスラコネクタ(2022年11月にNACSと改名)を採用している。グローバルな規格統一はまだだが、地域別ではある程度の統一は図られている。

 これら充電施設機器とそのコネクタ形状だが、ユーザーサイドから見れば自分が所有している車両に対応したモデルが行動範囲内に整備されていれば問題はない。すなわち、国際的な規格統一などは、購入車両を検討する上での

「要件の優先度」

として高くない。

 問題は車両を提供する側、すなわち自動車メーカー側の事情にある。その車両をどの地域に提供するかによって変わってくるが、グローバル市場を抱えているメーカーであれば全ての充電機器に対応しなければならない。

 すなわち、開発と製造に加えて、消費地までの車両の配送やその管理などにも相応のコストが掛かるということだ。

 テスラはこうした問題をクリアするため、あえて自社専用コネクタと充電設備を販売地域に提供する道を選択した。これは将来を見据えた“攻めの戦略”ゆえの措置だった。

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