運転士不足なのはバス・トラックだけじゃない! 全国で相次ぐ「鉄道」自動運転プロジェクト、急がなければ公共交通は崩壊危機だ
運転士不足が深刻さを増すのは、路線バスやトラックだけでない。鉄道もまた運転士不足に悩まされている。解決に向け、JR各社や私鉄大手は自動運転の実用化を急いでいる。
和歌山港線でレベル2.5の走行実験へ
運転士不足が深刻さを増すのは、路線バスやトラックだけでない。鉄道もまた運転士不足に悩まされている。解決に向け、JR各社や私鉄大手は自動運転の実用化を急いでいる。南海電鉄とJR西日本が乗り入れ、ラッシュ時に大勢の乗客でにぎわう和歌山県和歌山市の和歌山市駅。商業施設や図書館などが入った駅ビルから西へ単線の線路が延びる。
和歌山市内の和歌山港駅へ向かう延長2.8kmの南海和歌山港線だ。和歌山港駅の隣では南海グループの南海フェリーが徳島県徳島市行きのフェリーを1日8往復運航している。
この和歌山港線で近く、自動運転の走行実験が始まる。実験車両は2両編成で、ダイヤの間を縫って乗客を乗せずに昼夜とも走る。自動運転レベルは運転士資格がない係員付きの2.5。係員は運転台に乗務し、緊急停止操作をするが運転しない。レベル2.5を選んだのは、既存施設を活用でき、投資コストを抑えられるからだという。
将来の運転士不足に備える
実験車両には南海電鉄の自動列車停止装置に信号システムメーカー・京三製作所と共同開発した高機能型自動列車運転装置を組み込み、和歌山港線の信号機の位置や勾配、列車停車位置などを記憶させている。
走行実験ではこのシステムの安全性を検証するとともに、運転士と同程度の加減速ができるかなどを確認する。
南海電鉄が自動運転の実験に入るのは、将来の運転士不足に備えるためだ。導入路線は和歌山港線と大阪府高石市の高師浜線羽衣~高師浜間1.5kmを考えている。南海電鉄は
「和歌山港線はフェリーに合わせたダイヤで、日中でも運行本数が少ない。高師浜線は運休して高石市の羽衣駅周辺で高架化工事をしており、完成すれば踏切がなくなる」
と説明した。