運転士不足なのはバス・トラックだけじゃない! 全国で相次ぐ「鉄道」自動運転プロジェクト、急がなければ公共交通は崩壊危機だ
運転士不足が深刻さを増すのは、路線バスやトラックだけでない。鉄道もまた運転士不足に悩まされている。解決に向け、JR各社や私鉄大手は自動運転の実用化を急いでいる。
長崎電気軌道が運転士不足で減便に
鉄道会社の走行実験が相次ぐ背景には、深刻な運転士不足がある。国交省鉄道統計年報によると、全国の鉄道会社で働く運転士は2020年度で約3万5400人。2012年度の約3万6000人に比べ、600人ほど減った。
鉄道会社は数年先の退職者数を見越して職員を採用してきたが、人手不足で十分な数を確保できない状態が続いている。しかも、定年退職が迫る運転士は増える一方。今後は大量退職が進んで運転士不足がさらに厳しくなる見込みだ。
東武鉄道は
「50代以上が全体の大部分を占めている。今までにない規模での世代交代が進む見通しで、運転士の養成を拡大するだけでなく、業務の自動化を推進せざるを得ない」
としている。
運転士不足から路線の減便に追い込まれる鉄道会社も出てきた。長崎県長崎市の長崎電気軌道は5月、蛍茶屋から桜町を経由して長崎駅前、赤迫へ至る路線を減便した。運行本数は、通勤通学時間帯の臨時便6便を含めた1日274便が48便少ない226便に。ただ、朝の通勤通学時間帯だけはダイヤ改正前と同じ本数を確保している。
長崎電気軌道は
「95人の運転士がいるが、改正前のダイヤだと16人不足している。これ以上、無理をさせられず、やむなく減便した。運転士は常時、募集しているが、集まらない」
と頭を抱えている。
路線バスでは需要があるのに、運転士不足で減便に追い込まれる事例が全国で相次いでいる。今のままでは近い将来、鉄道も同じ状況に陥ることが予想できる。自動運転の導入を急がなければ、公共交通としての鉄道網は崩壊の危機に直面する。