「赤字ローカル線は即廃止」 ネットにはびこる“採算論者”に決定的に欠けた公共的思考
ローカル線廃止が想定するデメリットについての考察は軽視されがちだ。廃止は日本の鉄道事業にとって本当に正しい選択なのだろうか。
池田町長に取材

日高本線の一部区間は2015年1月、高波などにより鉄道施設に損傷を受け、鵡川~様似116.0kmが不通となった。JR北海道から復旧費用に加えて、海岸浸食対策として離岸堤の整備に100億円を超える規模の費用が必要となることが示された。
さらに同社は、地元自治体に対して鉄道施設を自治体が保有する「上下分離」または「地元自治体一定の費用負担」による年13.4億円の負担を求めた。一部の自治体は大きな被害がなかった鵡川~日高門別間の復旧を、浦河町は鵡川~様似間の復旧をそれぞれ主張した。
北海道を含む関係自治体の支持を得られる見込みがないことが次第に明らかになり、JR北海道は鉄路廃止へとかじを切る。
2016年12月21日、同社は「日高線(鵡川・様似間)の復旧断念、ならびにバス等への転換に向けた沿線自治体との協議開始のお願いについて」という文書を公表した。さらに2020年6月、総額25億円の支援金拠出を表明した。浦河町も
「基礎自治体が鉄道の赤字を継続的に負担することは不可能」(池田町長)
と判断し、バス転換に同意した。2021年4月1日、同区間は廃止された。
池田町長は
「道路、空路、航路については、行政がインフラを整備する。自前でのインフラ整備が求められるのは鉄道だけで、不公平だとの思いは今も変わらない」
と心境を明かし、JR北海道について
「国は『民間企業だから経営問題は自分たちで解決すべき』という説明に終始している」
と嘆息する。