VWが独自のバッテリーセル開発へ 研究開発施設を開設 さらに7000万ユーロを投資

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フォルクスワーゲングループコンポーネンツが、欧州における最先端のバッテリーセル研究開発拠点をドイツに開設。VWグループはさらに欧州で今後六つのバッテリー工場の稼働を目指す計画を立てている。

欧州最先端のバッテリー開発ラボへ

開設したバッテリーセル研究開発拠点(画像:フォルクスワーゲン)。
開設したバッテリーセル研究開発拠点(画像:フォルクスワーゲン)。

 フォルクスワーゲン(VW)グループコンポーネンツが、2021年9月、欧州における最先端のバッテリーセル研究開発拠点を同社のギガファクトリーがある独ザルツギッター(Salzgitter)に開設した。これにより、フォルクスワーゲングループはバッテリー技術の専門性をさらに拡大し、独自のバッテリーセルの開発・生産に向けて次のステップを踏み出した。

 2025年以降、VWの「ユニファイドセル(Unified Cell)」をザルツギッター工場で生産する計画であり、将来的には、研究所にて約250人の専門家が四つの研究室に分かれてセルの開発・分析・検査の分野での研究を行う予定だ。VWは、当該施設に対しおよそ7000万ユーロ(約92億円)を投資したという。

 ザルツギッターにあるコンピテンスセンターは、グループ全体の材料テスト、リリーステスト、品質保証、および電気自動車(EV)用バッテリーセルの一連のモニタリングを担当している。さらにCoE(Center of Excellence、組織を横断するプロジェクトの中核となる研究拠点)では、約160人が現在バッテリー開発に携わっている。2022年末までにCoEは、適切なセル材料およびフォーマットの研究、分析および開発に約250人の専門家を含む1000人以上の従業員を増員する予定だ。

 例えばザルツギッター工場では、リチウムを検出できる世界でも数少ない走査型電子顕微鏡を配備するほか、急速に充放電したバッテリーの性能や劣化の徴候をテストするための高度に自動化された試験フィールドなどがある。

 また研究室は4領域に分割され、相互にコミュニケーションしながら研究が進められる。例えばセル開発研究室では、新しい材料の適合性が評価され、化学製剤、電極材料およびプロセスが開発される。そこから隣のパイロットラインに革新技術を転送し、小規模生産に対応する。

 分析ラボでは、細胞の構成要素や原材料を分解し、競合分析や品質保証を行い、環境安全研究所では、バッテリーセルは六つのチャンバーで耐久テストを受け、電気的・熱的・機械的ストレスに晒される。新しい試験方法もここで研究される。

 そして電気試験分野では、あらゆる条件や電力クラスの実験が用意され、性能、劣化現象および長期的なロバスト性をテストする。

 VWグループは、2025年からザルツギッターのギガファクトリーで、量販車種向けの新たなユニファイドセルの生産ラインを立ち上げる計画だ。また2030年までにパートナー企業と共同で六つのバッテリー工場(合計で年間240GWhのバッテリー生産能力)を欧州で稼動させることを目指す。そのうちザルツギッターでは年間40GWhのバッテリー生産能力を確保する。このユニファイドセルは、バッテリーのコストを最大50%削減することを目標としている。

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