ヨーロッパ「高速路線バス」の知られざる実態 鉄道の強力ライバルも、実際に乗ってみて感じたメリット・デメリットとは
鉄道より安く、ダイヤも正確なヨーロッパの都市間高速バス。実際に乗ってみた筆者が味わった意外な現実とは。
国際間輸送が禁じられていた路線バス

今や大都市から地方都市まで、あらゆる地域をくまなくネットワークする高速路線バス。ほとんどの人が、一度は乗車した経験があるのではないだろうか。都市間輸送において、高速路線バスは航空機とともに、鉄道の強力なライバルとなる存在だ。
都市間高速バスと一口にいっても、日中に所要1~4時間程度の距離を結ぶ短・中距離路線から、夜間に10時間以上掛けて数百km離れた都市間を結ぶ夜行便まで、種類はさまざまだ。
夜間高速バスについては、リクライニング付き3列独立シートが標準仕様となっており、最近ではパーティションで個室のように仕切った最上位のデラックス席や、その逆に横4列とする代わりに低廉な価格で座席を提供する学生向け座席など、値段によって細かい差もある。利用客が自分の好みや懐具合に応じて座席を選べるのはうれしい。
米国やアジアなど、日本以外の多くの国でも、都市間高速バスは多く運行されてきたが、実はヨーロッパだけは少々事情が異なった。現代の状況を見ればにわかに信じがたいが、鉄道や航空機との競争を避けるため、とりわけ国際間輸送については
「路線バスの運行が許可されていなかった」
のだ。
転機となったのは2009年、欧州議会において欧州連合(EU)圏内の都市間高速バスの運行を許可するよう、規制が緩和されることになった。EUに加盟するすべての国の事業者は、国籍などによって差別されることなく自由にEU各国へアクセスすることが可能な、いわゆるオープンアクセス法が施行されたのだ。