タクシー・バスによる貨物運送「全国解禁」 車両のトラック化は物流業界に吉か凶か

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貨客混載制度の「実施区域の見直し」が、6月30日から施行される。貨客混載制度とは「貸し切りバス事業者」「タクシー事業者」がトラック事業の許可を得ることで、バス・タクシー事業に使う車両で貨物を運べるようになるというものだ。

ニーズがありながら置き去りの地域

山あいの村のイメージ(画像:写真AC)
山あいの村のイメージ(画像:写真AC)

 今回の貨客混載制度の見直しでは、現行ルールではカバーしきれなかったニーズをフォローする目的がある。それでは、なぜ現行ルールではすべてのニーズをカバーしきれなかったのだろうか。

 それは、過疎地域に該当しなければならないという大前提があるからだ。国土交通省が例示している潜在的なニーズの例をひもとくと、次のふたつの傾向が見えてくる。

・人口4~5万人程度の市町村:愛知県幸田町、北海道北斗市など
・過疎地域でありながら平成の大合併で大きな市町村に編入されたエリア:奈良県奈良市

 人口4~5万人程度の市町村では、旅客もしくは貨物事業者の事業の収益性の確保や負担軽減、ラストワンマイルの担い手の確保といった理由から、貨客混載制度の適用が必要となってくる。市民の買い物手段の多様化も背景にある。

 また、奈良県奈良市の例では月ヶ瀬地区が該当する。月ヶ瀬地区は、奈良市の中心部から1時間程度の山間部にある。元は月ヶ瀬村であったが、2005(平成17)年の平成の大合併で奈良市に編入されたがゆえに、貨客混載制度の要件に当てはまらずに対象から外れていた。月ヶ瀬地区のような例は意外と多いのではないだろうか。

 こうしてみると、地域の交通ネットワークや物流ネットワークの維持、高齢者の生活の利便性の確保という課題を解決する施策においては、市町村の人口による

「単純な線引き」

が今や無意味になっていることがわかる。

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