大手私鉄の兼業といえば「不動産」「流通」も、戦前はなんと電気事業が圧倒的だった!

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大手私鉄はコングロマリットを形成しているが、戦前はそのなかでも電気事業が圧倒的な存在感を占めていた。その歴史をたどる。

電鉄会社の再参入と新モデル形成

東急でんきのウェブサイト(画像:東急パワーサプライ)
東急でんきのウェブサイト(画像:東急パワーサプライ)

 さて、戦後の九電力体制も、1990年代から電力自由化が進められ、とりわけ東日本大震災後は原発事故から九電力体制への批判も強まり、2016年には電力小売りが自由化された。

 この機を捉えて電力小売業に新規参入した事業者には、電鉄会社もあった。東急の「東急でんき」や、東武の「東武のでんき」、小田急の「小田急でんき」が電鉄会社の電力再参入(?)の例である。もっともこの三社のうち、戦前も兼営電力業をしていたのは東急だけであるが。

 東急と小田急の電気事業はガスもセットで取り扱い、東武は自動車向けガソリン・電力の割引サービスをするほか、各社とも自社がすでに営んでいた兼業と組み合わせることで、総合的な生活サービスの形成をもくろんでいるようである。

 とりわけ「東急でんき」はすでにかなりの規模となっており(新電力の供給量ランキングで20位前後)、2022年度決算ではおよそ286億円を売り上げて約8億6000万の利益を上げている(官報による)。80年前にいったん途切れた電車と電力の縁は、再度結びつきを形成しようとしているのであろうか。

 もっとも、戦前の電鉄兼営電力業は、自家発電をしたり、電力は買電で調達しても配電設備は自前で建設したりしていたが、現在の電力自由化は全部九電力の設備を借りてのものである。インフラ企業としては投資が少なくて済む分、地域独占はない。あくまで多角的兼業の一角としての位置づけであり、戦前のような本業に次ぐ柱とはならないだろう。

 それでも、国家管理を経て形成された中央集権的な電力業から、地産地消的とでもいうべき分権的な新たな電力業のモデルをつくることはできるかもしれず、今後の発展に期待したい。

主要参考文献(文中にあげたものを除く)
・『阪神急行電鉄二十五年史』阪神急行電鉄、1932年
・電力政策研究会編『電気事業法制史』電力新報社、1965年
・『関東の電気事業と東京電力 電気事業の創始から東京電力50年への軌跡』東京電力、 2002年
・『官報』
・「東急でんき」「東武のでんき」「小田急でんき」各社サイト

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