瀬戸内「離島航路」廃止相次ぐ 厳しすぎる国の補助金条件、対象航路わずか4割台 地方の恨み節はいつまで続くのか?

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香川県の小豆島と岡山県備前市を結ぶフェリーが12月から運休する。離島航路には国の補助制度があるが、適用基準が厳しく、このままではさらに運休が相次ぐことも考えられる。

寂れたフェリーターミナル

瀬戸内観光汽船(画像:写真AC)
瀬戸内観光汽船(画像:写真AC)

 香川県の小豆島と岡山県備前市を結ぶフェリーが12月から運休する。

 離島航路には国の補助制度があるが、適用基準が厳しく、このままではさらに運休が相次ぐことも考えられる。

 フェリーターミナルの待合室は売店のシャッターが閉じられたまま。隣の飲食店は昼どきになっても人の出入りがない。

 岡山県備前市の日生(ひなせ)港行きフェリーが12月から運休する小豆島北部、香川県土庄(とのしょう)町大部の大部港。

 5月中旬に訪れると、寂れた姿が目に飛び込んできた。

空気を運ぶ船内

大部港に到着した瀬戸内観光汽船のフェリー(画像:高田泰)
大部港に到着した瀬戸内観光汽船のフェリー(画像:高田泰)

 フェリーは1969(昭和44)年に開設され、両備グループの瀬戸内観光汽船が1日4往復運航している。

 昼前に大部港へ到着した下り便は定員500人にもかかわらず、徒歩の乗船客3人と乗用車6台しか乗っていなかった。

 折り返しの上り便に乗り込んだのは、徒歩のふたりと乗用車、原付バイク各1台だけ。約1時間の運航中、船内は空気を運んでいるようだった。

 大部地区はこの30年ほどで人口が半減し、約900人まで落ち込んだ。産業の停滞と住民の高齢化が深刻で、近くに人気観光地も少ない。乗り場の係員は

「大部地区にはフェリー以外、何もない。運休後、地区はどうなるのだろう」

と不安を口にした。

経営努力だけで航路維持は限界

赤枠内が香川県土庄町の大部地区(画像:(C)Google)
赤枠内が香川県土庄町の大部地区(画像:(C)Google)

 フェリーは小豆島と本州を結ぶ最短航路が売り物だが、大部地区と備前市の日生地区に深い交流があるわけではない。生活路線になりえないとして、

「京阪神の観光客」

を小豆島へ運ぶ航路になってきた。

 小豆島は土庄町と小豆島町で構成され、土庄町の土庄港、小豆島町の池田港など5港に香川県高松市や岡山市、神戸市などと結ぶ8航路が運航している。旅客争奪戦の激化で経営に厳しさが増すところへ、コロナ禍と燃料費高騰が直撃した。瀬戸内観光汽船は2020年度、旅客が前年度からほぼ半減し、運輸収入が約45%減る大打撃を受けている。

 瀬戸内観光汽船は保有資産売却でしのいできたが、団体旅行の減少など需要動向に大きな変化があり、経営再建が困難と判断した。両備グループは

「年間約7万人の利用しかなく、維持費に約3億円かかる。経営努力だけで航路を維持するのはもう限界」

という。

 土庄町と備前市が航路維持を望んだため、両備グループは船を地方自治体で所有し、瀬戸内観光汽船が運航に専念する「公設民営方式」を提案した。しかし、色よい返事を得られなかった。土庄町は人口約1万3000人、備前市は人口約3万人。土庄町企画財政課は

「場合によっては億単位の持ち出しが必要。規模の小さい自治体で対応できない」

と肩を落とす。

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