ローカル線より深刻 陽の目を浴びぬ「離島航路」存続問題、アフターコロナはどうなるのか
コロナ禍で利用者減

交通事業者はコロナ禍で大きな打撃を受けている。実際、鉄道ではダイヤ改正による減便が実施されている。
JR西日本は、2022年4月から京阪神エリアの運賃の一部値上げを実施。大阪~神戸間は410円から450円になり、通勤定期も値上げされた。ローカル線は赤字幅が一層拡大し、存続の危機に陥っている。
そんな鉄道より深刻なのが離島航路だ。瀬戸内海に面した地域には離島航路が多数存在しているが、コロナ禍で航路が廃止され、生活に支障が出ている地域もあるほどだ。
広島県は特に深刻となっている。同県の南部に位置する三原市では、三原港と因島(尾道市)の重井港を結ぶカーフェリーが2021年4月30日、廃止された。
この廃止で打撃を受けたのは、この航路が寄港していた佐木島(三原市)である。佐木島の人口は700人強で、日常の買い物はフェリーですぐに出掛けられる三原市に依存していた。
島北部の鷺港に寄港していたカーフェリーが廃止されたことで、島民の生活は一変した。高速船は残ったものの、カーフェリーは、三原市の須波港と生口島(尾道市)間を運航していたものが島南部の向田港に寄港することになった。
従来の三原港は市内中心部にあり、ショッピングモールなども近くにあった。対して、須波港は市街地からは離れており、市街地に向かって片側一車線の道路が走っているだけ。利用者は遠回りを強いられるため、利便性が低下した。
さらに2021年4月、高速船の運賃も520円から710円へと値上げになった。住民たちの要望で、三原市は値上げ幅と同じ額の回数券を配布することになったが、この措置はあくまで「激変緩和措置」とされ、今後も継続するかは明らかになっていない(『中国新聞』2021年12月23日付朝刊)。
1999(平成11)年に全面開通した「しまなみ海道」は愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ全長約60kmの道路で、因島や大三島など瀬戸内海に浮かぶ六つの島々を経由している。コロナ禍は、これらの島々にも打撃を与えている。