「EV = 走るコンピューター」が理解できない日本人! テスラ・中国勢がなぜ圧倒的躍進を遂げているのか、その根幹をまずは知るべきだ

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4月18日~27日に開催された上海モーターショー以来、日本の自動車業界には「上海ショック」が吹き荒れているという。日本のEVの遅れに関して、批判的な論調を控えていた国内のメディアも、さすがに今回は日本の立ち遅れへの危機感を伝えるようになった。

「ナマズ効果」で中国勢テスラを追走

テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事)
テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事)

 そのテスラが上海に工場を立地したことで、刺激を受けた中国各社が「ナマズ効果」による危機感と競争の激化で、一気に進化したとZeyi Yangは指摘する。

「ナマズ効果」とは、ドジョウの水槽の中に天敵のナマズを1匹入れることで、ドジョウたちがナマズから逃げようと泳ぎ回り、結果として鮮度を失わないという中国の故事から転じて、競争がゆるい環境に強敵を放り込むと、もともと弱かった者が自分自身を強化して強くなる、という意味だ。

 テスラも上海に工場を立地することで、迅速な許認可と建設、蓄電池などのサプライチェーンの形成などの多大な恩恵を受けた。

 比亜迪(BYD)など中国の新興EVメーカーも、テスラという「ナマズ」を目の当たりにして、蓄電池はもちろん、「車輪付きコンピューター」と呼ばれるデジタルデザインやユーザーインターフェース、外装や内装の質感やオーディオなどの性能が一気に高まり、世界最高水準へと品質と競争力を高めた。

 こうして、ますます勢いを増すテスラと中国勢によって、日独米のレガシー自動車勢は苦戦を強いられている。EVに完全に出遅れた日本の自動車メーカーはもっとも厳しい状況だが、早くからEVにかじを切ったはずのフォルクスワーゲンやフォードでさえ苦戦している。

 フォルクスワーゲンは欧州の乗用車市場全体ではいまだに首位の座を守っているが、前述のとおり、EVはテスラに追い抜かれ背中がどんどん遠ざかっている。

 同社は、中国や米国市場ではEVも既存の内燃機関(ICE)も両方とも下落しつつある。1台あたりの利益ではテスラ(約9600ドル/台)がダントツで、フォルクスワーゲンは10分の1の約970ドル/台にすぎない。

 テスラは、自動車販売網(ディーラー)を持たず、スマートフォンやパソコンからユーザーが直接購入する販売形態であるため、利益率では他社よりもさらに有利であり、レガシー自動車勢にとっては、今後、ディーラーが重荷になりうる。

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