「EV = 走るコンピューター」が理解できない日本人! テスラ・中国勢がなぜ圧倒的躍進を遂げているのか、その根幹をまずは知るべきだ

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4月18日~27日に開催された上海モーターショー以来、日本の自動車業界には「上海ショック」が吹き荒れているという。日本のEVの遅れに関して、批判的な論調を控えていた国内のメディアも、さすがに今回は日本の立ち遅れへの危機感を伝えるようになった。

テスラによる「クルマのiPhone化」

世界のEV(BEVおよびPHEV)販売(単位:1000台)(画像:EV Volume)
世界のEV(BEVおよびPHEV)販売(単位:1000台)(画像:EV Volume)

 もうひとつ、近年のEV化の急激な進展では、イーロン・マスクとテスラの貢献が圧倒的に大きい。マスクとテスラは、従来のEVや自動車産業を完全に次のステージに移行させた。

 テスラ車と従来のレガシー自動車は、しばしばiPhoneとガラパゴス携帯の違いに例えられる。スマートフォンと同様に自動アップデート(OTA)を可能とし、さまざまなスイッチ類をタッチパネルの画面操作にまとめて非常にシンプルにして、文字通り

「車輪付きコンピューター」

そのものとした。

 数年に一度のモデルチェンジが慣習だったレガシー自動車に対して、製造途中でも常にアップデートし(週に20程度ともいわれるアジャイル方式)、ソフトウエアで更新できるものは販売後のテスラ車も定期的にアップデートされることで最新の状態を維持できる。

 半導体不足に苦しんだレガシー自動車勢を尻目に、テスラは大きな影響を受けなかった。IT企業でもあるテスラはソフトウエアも垂直統合しており、調達可能な代替半導体に対応できるファームウエアを短期間に用意して、半導体調達の幅を広げて乗り切ったからだ。

 車両や製造も、さまざまな設計やプロセスをゼロから再構築してきた(マスクの「第一原理思考」と呼ばれる)。

 例えば、製造プロセスも「ギガプレス」というアルミ合金一体鋳造を自動車産業で初めて導入することで、部品・ロボット・人員・コストの大幅削減と製造スピードをアップさせ、フォルクスワーゲンの生産スピードの3倍とされている。

 蓄電池の効率に最重要な熱管理を早くから取り入れ、廃熱を空調に利用するヒートポンプを自ら開発し、断熱性の高い二重ガラスもいち早く導入するなどして、

・電費(走行距離あたりの電力消費)
・蓄電池効率(蓄電池容量に対する走行距離)

ともに、他社よりも一段と高い水準にある。

 マスクはギガファクトリー(製造工場)そのものも「製品」と呼び、最初のカリフォルニアで苦労した経験を上海、テキサス、ベルリン、そして次に建設を決めたメキシコへとそれぞれアップデートしながら、建設プロセスでも「第一原理思考」による高速ペースで建設から生産へとこぎつけ、その後も各工場で増設・増産を進めている。

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